「日本骨髄バンク」へのご協力をお願い致します。あなたにしか助けられない命があります。
皆様、こんにちは。
今回は、公益財団法人 日本骨髄バンク(以下、骨髄バンク)さんについて、お話ししたいと思います。皆様もお名前は聞いたことがあるかもしれません。しかし、意外と知らないことも多いはず。この記事が、少しでも理解の助けになれば幸いです。
1991年設立の公益社団法人(2012年認定)。日本赤十字社と医療機関、地方自治体と協力し、白血病などの血液の病気を持つ患者さんと骨髄・造血幹細胞を提供してくださるドナーさんを繋ぐ役割を担っています。また、1人でも多くのドナーさんに協力して頂けるよう、普及・啓発活動も推進しています。
注1)骨髄バンク事業は、国の定める「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に則っています。
注2)ここで言う「ドナー」とは「提供希望者」の意味です。
参考:日本骨髄バンクの概要
日本赤十字社とは、また違う組織なんだね。
実は、平成生まれの若い組織なんだ。だから、知らない人も意外と多いんだ。
ところで、血液の病気って、どんな病気なの?どうして、ドナーさんの協力が必要なの?
それについては、次の章でお話しするね。
2. 血液の病気について
血液は、ヒトの体内を循環する赤い液体で、私たちの細胞の1つひとつに酸素や栄養を運び、ウイルスや細菌と言った外敵と闘い、損傷した身体の傷を治すなどの働きを持っています。言うまでもなく、血液は、私たちが生きる上で不可欠なものです。血液の病気とは、正常な血液が作られなくなり、私たちの命を支えるこれらの働きが失われていく病です。「血液のがん」とも言われています。原因は不明で、どの年齢層でも発症する可能性があります。毎年、新たに約1万人の方が、重い血液疾患と診断されています。
医療技術の発展により、薬物療法や放射線治療などで治るケースもありますが、毎年約2000人もの患者さんが、骨髄バンクドナーさんからの提供・移植を必要としています。
- 全身の倦怠感、疲労感
- 発熱
- 貧血
- 動悸
- ふらつき
- あざが出来やすい、治りにくい
- 鼻血が止まらない、歯ぐきから出血しやすい
- 傷が治りにくい
血液中の「白血球」「赤血球」「血小板」などの働きが低下することで、上記のような症状が出ます。徐々に進行していくため、初期段階では風邪や過労と誤認することが多くあります。血液の病気は、誰にでも起こり得ます。もしも、1ヵ月近く症状が続いたり、繰り返し症状が出るようであれば、一度、血液内科のある医療機関を受診してみてください。
3. 現状の課題 – 骨髄バンクドナーの不足
血液の病気に苦しむ患者さんを1人でも多く救うためには、1人でも多くのドナーさんの理解と協力が必要となります。なぜなら、移植成功のためには、患者さんとドナーさんの「HLA型(白血球の型)」が適合することが条件だからです。この型は、一般的な血液型(赤血球の型)とは異なり、数万種類も存在します。両親から片方ずつを受け継ぐため、患者さんの兄弟姉妹間であっても適合者が見つかる確率は4分の1です。そして、非血縁者間では非常に低く、数百から数万人の1の確率でしか一致しません。患者さんにとって、適合するドナーさんが見つかることは奇跡にも近いことなのです。その確率を少しでも上げるために、1人でも多くのドナー登録が必要なのです。
- 骨髄・末梢血間細胞の提供の内容について、理解している方/ご理解頂ける方。
- 年齢が18~54歳以下で、健康状態が良好な方。(詳細は、こちら)
- 体重が男性45kg以上/女性40kg以上の方。
地道な普及・啓発活動のお陰で、骨髄バンクのドナー登録者数は、現在、553,446 人に達しました(2024年1月末時点)。しかし、ドナー登録可能な年齢人口(18~54歳以下)で見れば、全体のわずか1%程度に留まっています。健康状態や病歴など、ドナー登録上の制約はあるものの、1%は未だ少ないと私は感じています。実際、移植を希望する患者さんのうち、2人に1人は移植できないのが現状です。
そして、ここにも少子高齢化の波が来ています。ドナー登録は、満55歳の誕生日を以って取り消しとなるため、今後5年以内に13万人、10年以内に22万人以上がドナー卒業となると見込まれています。皆様もCMでご存知のように、特に若い世代(20~30代)の理解と協力が必要なのです。
また、ドナー不足の他に、もう1つ課題があります。それは、ドナーさん自身や家族、その周囲の方々の「正しい理解」です。仮に患者さんとのHLA型(白血球の型)が適合しても、ドナー候補者の都合がつかなかったり、連絡が取れないケースが非常に多いからです。実際、適合したドナー候補者のうち、年間3,300人以上が、入院や通院といった提供までの都合をつけることができずに、提供を断わるというのが実情です。移植を待つ患者さんからは、「ドナーが見つからない辛さよりも、ドナーが見つかったのに断られる辛さの方が苦しい…」という声もあります。だからこそ、1人でも多くの命を救うためには、ドナー登録の促進だけではなく、「正しい理解」を持った上で提供しようと思ってもらえることが重要なのです。
2023年9月16日の「世界骨髄バンクドナーデー」を機に、患者さんやドナーさんだけでなく、広く多くの人々に参加してもらえるよう、複数年に渡る認知向上キャンペーン「#つなげオレンジプロジェクト」がスタートしました。ドナー登録や、提供のために仕事や学校を休むことがもっと当たり前に、もっと応援され、もっと感謝し合える社会となることを目指す、新しい取り組みです。少しでも興味・関心を持って頂けましたら、プロジェクトへのご協力をお願い致します。
4.ドナー登録から意思決定、提供までの7step
ヒトは、知らないことに対して不安や恐れを抱く生き物です。皆様が感じるその懸念を少しでも払拭できるよう、この章では、ドナー登録から提供までの大まかな流れを説明したいと思います。
Step1:ドナー登録
ドナー登録は、「骨髄バンクドナー登録申込書」への記入と、HLA型(白血球の型)を調べるための「2mlの採血」で完了します。何れも、献血センターや献血ルーム、献血バス、保健所、各都道府県に設置された受付窓口などで、簡単に行うことができます。
なお、献血センターや献血バスには「ドナー登録説明員」さんがいらっしゃる場合があり、より詳しいお話を聞くことができます。登録を強要されることは一切ありませんので、受付にて、お気軽に尋ねてみてください。
Step2:適合通知
登録したHLA型が、患者さんのものと適合すると、骨髄バンクさんから「オレンジ色の適合通知」と、携帯電話に「ショートメッセージ」が届きます。登録から早い時期に届くことも珍しくありません。
このタイミングで、改めて提供意思を確認して頂くことになります。提供意思に変わりはないか、辞退するか、7日以内にご回答をお願い致します。
Step3:確認検査
提供意思に変わりなければ、確認検査へと進みます。ドナーさんの居住地に近い認定施設(医療機関)にて、骨髄バンクのコーディネーターさんによる詳しい説明と、調整医師による問診・採血(約30ml)が行われます。所要時間は、1~2時間前後です。
コーディネーターさんは、ドナーさんや医療機関、行政との連絡・調整全般を行ってくれます。最後までドナーさんに寄り添ってくれる心強い存在です。
これは心強いね。
Step4:最終同意面談(重要)
確認検査後、2~6週間で、最も移植に適したドナーさんが第一候補者に選ばれます。その後、ドナーさん本人の意思とご家族の代表者の同意を確認する「最終同意面談」が行われます。最終同意書へのサインを以って、患者さんは移植の準備に入ります。そのため、最終同意確認後に同意を撤回すると、患者さんは適切な治療を受けられなくなる場合があります。ここでの決断が、とても重要な意味を持つことをご理解ください。
ドナーさん本人が提供を希望しても、家族から反対されるケースもあります。ドナー候補者に選ばれる前から、提供について、ご家族とよく話し合っておきましょう。
Step5:採取前健康診断
提供の1カ月前になると、入院・採取を行う病院にて健康診断を行います。最終同意後は、暴飲暴食や怪我などに気を付け、採取に備えた健康・体調管理を心掛けてください。
Step6:骨髄/末梢血幹細胞の採取・提供
提供方法には2つの種類があり、どちらを選ぶか(選ばないか)は、ドナーさんに委ねられます。希望がある場合は、Step3:確認検査の際に、コーディネーターさんにお伝えください。また、提供の際には入院が必要になります。ドナーさんの費用負担は一切ありませんので、ご安心ください。
「骨髄提供」では、腸骨(骨盤上部)に針を刺して、骨の中にある骨髄液を採取します。全身麻酔を施した上で行われるため、採取時の痛みはありません。所要時間は、2~4時間程度です。麻酔が切れると、採取部分の痛みや発熱を生じる場合がありますが、一時的なものです。個人差もありますが、採取後2~3日で退院し、復職・復学されるケースが一般的です。
なお、骨髄採取量は、通常400~1200mlです。採取量に応じて、貧血を防ぐために、事前にドナーさんご自身の血液(自己血)を採取・貯血する場合もあります。
一般的には、この提供方法のイメージが強いね。
勘違いされやすいけれど、脊髄(背骨)に針を刺すわけではなんだ。
もう1つの「末梢血幹細胞提供」は、骨髄液の中にいる「造血幹細胞のみ」を抽出・採取する方法です。G-CSFという白血球を増やすお薬を注射すると、造血幹細胞が血液中に押し出されます。このお薬を3~4日間投与した後、成分分離装置を使用して、血中の造血幹細胞を3~4時間かけて抽出・採取します。残りの血液を体内に戻し、循環させるため、採取完了まで両腕を動かすことはできません。その間は、医療スタッフが待機し、定期的に体調チェックを行ってくれます。
G-CSFは1991年に承認された安全性の高いお薬です。副作用として、頭痛や骨の痛み(腰痛、関節痛など)が生じる場合がありますが、多くは一過性のものです。採取の翌日には退院し、復職・復学することが可能です。
成分献血に似てるね。これなら、腰に持病を抱える人でも提供できそう。
2010年から導入された比較的新しい提供方法なんだ。だから、知らない人も意外と多いんだ。
何れの場合でも、ドナーさんの安全が最優先されます。実際、骨髄バンクを介して行われた採取では、死亡事例は1つもありません。また、万一に健康被害が生じた場合でも、骨髄バンクが加入している傷害保険から最大1億円の保険金が支払われます。
Step7:退院&アフターケア
退院後は、定期的にコーディネーターさんが健康状態についてのフォローアップを続けます。また、1~4週間後に採取後健康診断を行うなど、ドナーさんの体調が回復するまで寄り添ってくれます。
参考:ドナーのためのハンドブック(日本骨髄バンク発行)
5. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
実は、私も骨髄バンクドナーとして造血幹細胞を提供した経験があります。ドナー登録や提供に対して、皆様が感じる不安な気持ちもよく分かります。しかし、当事者として関わってみることで、はじめて分かることもあります。適合通知が届いたとき、私は運命を感じました。最終同意書にサインしたとき、もう自分1人だけの身体ではないことを強く意識しました。患者さんの命を救うために、多くの「人の優しさ」が繋がっていることを知りました。その1人になれたことを今でも誇らしく思っています。
この世界には、あなたにしか助けられない命があります。あなたの勇気と優しさは、移植を待ち望む患者さんだけでなく、その家族の未来をも救う可能性を秘めています。そのための社会の仕組みはもう出来ています。どのような形でも構いません。少しでも関心を持って頂けましたら、日本骨髄バンクさんの活動にご協力をお願い致します。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。
▼「普及・啓発活動」へのご協力のお願い
▼「寄付」へのご協力のお願い