人と社会

地道なごみ拾いが、心と地球を綺麗にする。ごみ拾いを楽しく続けられるSNSアプリ「ピリカ」

otobokezizou

 皆様、こんにちは。

 未だ大量生産・消費・廃棄が前提となっている現代社会では、自然界(特に、河川や海洋)へのごみの流出が、世界中で大きな問題になっています。海に浮かんでいるのは、魚ではなくプラスチックごみだった…そんな光景が日常となりつつあります。ごみ問題は、景観を損なうだけでなく、環境汚染や生態系の破壊、そして、食物連鎖の果てに私たちの身体にも健康リスクを与えています。これらのごみの7~8割は、街で捨てられ、無視され、放置されたごみが原因です。つまり、ごみ問題は、私たちの無関心が積りに積もって生まれた結果なのです。

しかし裏を返せば、その問題解決もまた、私たち1人ひとりの積み重ねによって成しえるはずです。目の前に落ちているごみを1つ拾えば、その分だけ、地球は綺麗になります。一度でもごみ拾いを経験すれば、自ずとごみの捨てなくなります。地道なごみ拾いこそが、ごみ問題を解決する唯一の方法なのです。そこで今回は、大事だけれど、気づかれにくいごみ拾い活動を、仲間との繋がりによって広げるSNSアプリ「ピリカ」を紹介したいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、深刻化するごみ問題への理解・関心を深め、地球と心を綺麗にする小さな一歩を踏み出して頂けたら嬉しいです。

 ごみ拾いを楽しく、続けやすく!をコンセプトに、京都大学の研究室から生まれたごみ拾いSNSです。ごみの種類や量、拾った場所、日時など、SNSという特性を活かして、ユーザーさんのごみ拾い活動が見える化&共有されるのがポイントです。モラルに訴えかけるのではなく、仲間同士の繋がりによってモチベーションを高め、楽しくごみ拾いを続けられるようデザインされています。

これまでに、世界134の国と地域で、320万人以上のユーザーさんの手によって累計4.1億個以上のごみが拾われています。(2025年5月時点)。

参考:株式会社/一般社団法人ピリカ「ホームページ」

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
あわせて読んで頂きたい記事
廃棄りんごのアップサイクル。動物にも、環境にも、心にも優しいレザーブランド「RERIGO」
廃棄りんごのアップサイクル。動物にも、環境にも、心にも優しいレザーブランド「RERIGO」

2. 海に浮かぶ「便利の代償」

2-1. 世界で増え続けるごみ

 世界では年間21億トン以上もの廃棄物が排出されていますが、リサイクルされているのは19%とわずか…しかも、38%は適切な処理が為されていません。実際、私たちの暮らす街、その端々に目を向けると、至る所にたくさんのごみが落ちていることに気づきます。増え続けるごみ…その自然界流出は、世界中で大きな問題になっています。特に、海洋プラスチックごみは深刻です。

2-2. 魚よりもごみが多い海 -海洋プラスチックごみ

 生分解されにくいプラスチックは、適切に処理されなければ100年以上も残り続けます。そして、事実上海に流出してしまったごみは回収不可能であるため、数百年にも渡って海の生態系に被害を与え続けます。その約8割は、街で不適切に捨てられたごみが、雨風によって河川や生活用水路へ、海へと運ばれることで発生しています。

国連環境計画(UNEP)の調査によると、世界の海に漂うプラスチックごみは1億5,000万トンを超えており、毎年 約1,100万トンのプラスチックごみが新たに流出し続けています。このまま対策を講じなければ、2050年には魚よりもごみの量が多くなるという試算さえあります。

参考:国連環境計画-国際環境技術センター「世界廃棄物管理概況2024」

2-3. 街から海へ、海からヒトへ -ごみが辿り着く場所

 海洋プラスチックごみは、ただの環境問題に留まりません。波や紫外線により細かく砕かれ、マイクロプラスチックとなり、魚や貝に取り込まれ、数多の食物連鎖を経て、最終的には人間の体内に蓄積していきます

マイクロプラスチックが、人間の健康にどのような影響を及ぼすか、まだ明らかになっていません。しかし、先述の通り、プラスチックは生分解されにくい物質です。身体に良いモノであるはずがありません。街から海へと捨てられたごみは、環境汚染や生態系の破壊だけでなく、巡りめぐって私たちに返ってきているのです。

3. ごみをポイ捨てする人間心理

 道端に捨てられたごみを見て不快な気持ちにならない人はいません。なのにどうして、ごみのポイ捨てはなくならないのか?教育の問題でしょうか?それとも、モラルが低いのでしょうか?そこには、複雑な人間心理があるのです。

3-1. 合理的な怠惰 -ほんのひと手間を惜しむ

 ごみ箱が遠かったり、見当たらなかっただけで、ポイ捨てに走ってしまうケースがあります。それは、ヒトには、コスト(時間と労力)を最小限にしたいという本能的な欲求があるためですごみを持ち歩くことは「手が塞がる」「汚い」「見た目が悪い」などの小さな不快となるため、それを一刻も早く解消したいという短期的な欲求が、社会的責任を上回ってしまうのです。

3-2. 匿名性 -誰にもバレない

 私たちヒトは、心の弱い生き物です。他人の目があるときは社会的規範を遵守する傾向にありますが、誰も見ていないシチュエーションでは、途端に逸脱行動を取る傾向にあります。故に、「誰がやったのか分からない」「誰にもバレない」と感じると、ごみのポイ捨てに対する抵抗感が薄れてしまうのです。匿名性が高いSNSで誹謗中傷コメントが多いのも、これと同じ心理です。

3-3. 同調性 -赤信号もみんなで渡れば怖くない

 社会的生き物であるヒトは、良くも悪くも、周囲の人たちの行動を見て、自分の行動を決める傾向にあります。ごみが1つも落ちていない綺麗な道であれば、ポイ捨てに強い抵抗感を覚えまが、ごみが散乱している汚い道であれば、「他の人もやっているから」という身勝手な理由で自身を正当化し、平気でごみを捨ててしまうのです。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

一方で、ヒトは「良い人間でありたい」「感謝されたい」という根源的な欲求も持っています。そんな欲求が、「誰かに見られていなくても、道に落ちているごみを拾う」という行為に繋がることがあります。

あわせて読んで頂きたい記事
「ありがとう」は魔法の言葉。そのたった一言で、私たちの世界は少し優しくなる。
「ありがとう」は魔法の言葉。そのたった一言で、私たちの世界は少し優しくなる。

4.「ピリカ」の3つの魅力!

 深刻化するごみ問題を解決するには、革新的なアイディアや最先端な技術ではなく、私たち1人ひとりの地道なごみ拾いが不可欠です。2011年5月にリリースされた「ピリカ」は、ごみ拾いで繋がり、ごみ拾いを広げるSNSです。大事だけれど、気づかれにくいごみ拾い活動の輪をSNSの特性を活かして広げることで、世界を少しずつ綺麗にしています。

目の白いとり
目の白いとり

東京都港区や神奈川県横浜市をはじめ、多くの自治体にも導入され、地域の清掃活動の定量分析や効率化、実施の促進に役立てられるよ。

Point 1:ごみ拾いを楽しく、続けやすくなる仕組み

 ごみを拾うと、その場からはごみが無くなり、形には残りません。その場にたまたま居合わせた人でなければ、その善意に気づくことはありません。それが、ごみ拾い活動が気づかれにくく、広がりにくい理由の一つです。
しかし、ごみ拾いの様子をピリカに投稿・共有することで、自身の活動を周囲の人たちに知ってもらうことができます。自分がどれだけ街を綺麗にしているかを実感できるだけでなく、他のユーザーさんから「ありがとう」の感謝のメッセージが返ってくることで、ごみ拾いを通じた繋がりをつくることができます。同じ志を持つユーザー同士の励ましが、ごみ拾いを楽しく続けられるモチベーションとなっています。

Point 2:仲間と集うイベント機能

 ピリカのユーザーさんは、アプリ内で簡単にごみ拾いイベントを開催したり、参加することができます。個人でのごみ拾い活動はそれだけで素晴らしいものですが、イベントを通して他のユーザーさんと共に活動することで、ごみ拾いをより楽しいものにすることができます。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

私たちヒトは、心の弱い生き物ですが、仲間の姿が見えると、不思議と強くなれるものです。

Point 3:課金なし、煩わしい広告もなし

 ピリカは「2040年までに自然界に流出するごみの量と回収されるごみの量を逆転させる」ことを目標に掲げています。その達成のために、ユーザーさんは、誰でも無料で利用することができます。事業運営に関しては、活動に賛同してくださる企業さんの協賛や自治体さんからの収益(調査費やサイト開発費など)によって賄っています(2014年9月末に黒字化)。 

5. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 誰も見ていなくてもお天道様は見ている、日本には、そんな古き良き教えがあります。他人の目がなくとも、どんな時も神様が見ているから、恥じない生き方をすべきという道徳的なメッセージが込められています。神様なんていない、と仰る方もいるかもしれません。しかし、少なくとも「自分の心」はその行いをしっかり見ています。人目を盗んで悪行を働くのか、人目がないところで善行を重ねるのか ―ごみのポイ捨てするのか、目の前に落ちているごみを拾うのか、豊かな人生を送るために、私たちがどちらを選ぶべきかは明白です。

しかし、私たちヒトは、心の弱い生き物。誰にも気づかれない、誰にも褒めてもらえない小さな善行けられるほど強くはありません。けれど、ごみ拾いSNS「ピリカ」を使えば、気づかれにくいごみ拾い活動を見える化し、他の仲間たちと繋がることができます。志を同じくする仲間たちと、楽しくごみ拾いを続けることができます。道端のごみを前にして「拾ってみようかな」と心が動いたなら、ちょっとだけ立ち止まって、心と地球を綺麗にするごみ拾いを始めてみてください。皆様の優しさの足跡が、後に続く誰かの心を動かし、街の景観を、美しい海を取り戻すことに繋がるはずです。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。また、和のテイストが大好きです。
記事URLをコピーしました