人と社会

異彩を、放て!「HERALBONY」は、障害福祉の世界に新しい変革をもたらすブランドです。

otobokezizou
私とあなたは違う。だから、私はあなたを尊重する。

 皆様、こんにちは。

 ダイバーシティやインクルージョン。一人ひとりの個を尊重し、認め合う多様性の時代と呼ばれて久しく経ちます。現在では、国や文化、宗教、人種、年齢、ジェンダーなどを越えて、様々な価値観が受け入れられるようになったと思います。これはとても素晴らしいことです。しかし、私たちがもっと目を向けなければならない人たちがいます。それは、いわゆる「障害者」と言われる人たちです。

 今回は、社会に根強く残る「障害」のイメージを変容し、誰もがありのままに生きる社会を目指す株式会社「ヘラルボニー」さんについて、ご紹介したいと思います。少しセンシティブなテーマにはなりますが、少しだけ勇気を以ってお付き合い頂ければ幸いです。

 2018年創業。「異彩を、放て。」をミッションに、障害福祉を起点に新しい文化を創ることを目指す福祉実験カンパニーです。国内外の主に知的障害のある150名以上の作家さんとアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを収集・保有し、様々なモノ・コト・バショにプロデュースしています。起用されたアートの作家さんには、ライセンスフィーが支払われる相互扶助の仕組みが特徴です。1本のネクタイから始まり、現在ではハンカチやシャツなどのファッションアイテム、壁に飾るアート、さらにはホテルの空間デザインにまで活動の幅を広げています。

HERALBONY | コーポレートムービー
コツメちゃん
コツメちゃん

先天的な自閉症を持つお兄さんがノートに記した謎の言葉「ヘラルボニー」をそのまま社名にしたそうです。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

創業者お二人の原体験から立ち上がった事業であり、社会の意識変革をもたらす大きな可能性を秘めています。

2.「障害者」に対する意識・イメージ

ちょっと変わっている…

何を考えているかわからない…

急に気分が変わったりして怖い…

会話ができない…

どのように接したらよいかわからない…

 日本では、障害のある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会(共生社会)を実現するため、「障害者差別解消法」が定められています。2024年4月には、その改正版が施行され、事業者による合理的配慮の提供も義務化されます。この共生社会の考え方は広く浸透してきており、93.9%の人が「障害のある人が身近で普通に生活しているのが当たり前だ」と思っています。一方、「障害を理由とする差別や偏見」については、88.5%の人が「あると思う」と答えており、障害者に対するマイナスイメージが根強く残っていることが覗えます。「障害」のある子どもを持つ多くの親御さんは、自身が亡くなった後に残されるお子さんのことをとても心配されています。それは、現在の社会が「普通」を強要し、ありのまま生きることを尊重していない証拠かもしれません。

内閣府「障害者に関する世論調査(2022年11月)」1
内閣府「障害者に関する世論調査(2022年11月)」2

参考:内閣府「障害者に関する世論調査(2022年11月)」

 ヒトは、「知らないこと」に対して不安や恐れを抱く生き物です。そして、「知らないこと」から差別や争いが生まれます。私たちはきっと、テレビや新聞、ネットで見聞きした曖昧な情報から、「障害」に対して勝手なイメージを作り上げているのでしょう。

3.「ヘラルボニー」の取り組み -異彩を、放て。

考え方 -障害ではなく、「異彩」

普通じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。

 現在の社会では、福祉と言えば、支援や慈善活動といったイメージを持たれがちです。しかし、ヘラルボニーさんが社会に送り届けようとしているのは、「障害者アート」ではありません。「障害=欠落ではない」という思想と、「一人ひとりの認識」の変化なのです。手を差し伸べる対象ではなく、ビジネスパートナーとして作家さんに敬意を払い、作品の魅力が最も発揮されるようプロダクトをデザインし、社会に提案しています。障害福祉を越えた様々な事業を展開していくことで、知的障害のある人が「できない」ことを「できる」ようにするのではなく、「できない」という前提を認め合い、彼ら彼女らの個性に社会の方が順応していく、そんな未来の実現を目指しています。

② 作家ファーストのビジネスモデル

作家ファーストのビジネスモデル

 ヘラルボニーさんは、主に知的障害のある作家さん150名以上とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを収集・保有しています。そのアートデータを使ったファッションアイテムなどの商品開発や、企業さんとのコラボイベントを展開したりすることで収益を得ています。そして、起用されたアートのライセンスフィーが作家さんや福祉施設の報酬として支払われる仕組みです。書面上には還元率が明記されおり、お互いの合意を以って契約を結び、アートデータを預かる流れです。なお、作家さんの才能を発揮するビジネスとして、搾取にならない形で還元率を設定しているそうです。

コツメちゃん
コツメちゃん

ヘラルボニーさんのお陰で、作家さんが生まれて初めて確定申告できたというお話もあります。(詳細は、こちら

異彩アートをモノ・コト・バショへ

異彩アート

 ヘラルボニーさんは、さまざまな「異彩アート」を、さまざまな形で社会に送り届けています。それは、ファッションアイテムや壁に飾るアートだけでなく、異彩作家さんのアートを取り入れたポップアップストアや展覧会、ホテル、公共スペースにおける空間デザインも手がけています。また、ヘラルボニーさんにはアートディレクター部門があり、「障害者の方が頑張っているから買ってもらう」のではなく、商品デザインとしての活用可能性を十分に考えた上で、戦略的に「HERALBONY」というブランドを展開しています。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

「ヘラルボニー」さんの取り組みは、「2021年度グッドデザイン賞」を3部門で受賞された他、経済産業省が主催する「日本スタートアップ大賞 2022」でも「審査委員会特別賞」を受賞されました。

参考:「株式会社 ヘラルボニー」ホームページ

参考:「経済産業省METI Journal ONLINE」

4.結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 世の中に完璧な人間などいません。であるならば、私たち健常者も少なからず障害、いえ「異彩」を持っていると言えます。もちろん、「異彩」と向き合い、付き合っていくことが、簡単なことでないことは承知しています。それでも、私たちにできることはあります。まずは、彼ら彼女たちを知ること。理解できないからと諦めるのではなく、興味と関心を以って知ろうとすること。その努力はできるはずです。その一歩として、一度、「ヘラルボニー」さんのお店を覗いてみてくだい。そこに広がる優しくて美しい世界が、皆様の価値観を変えるキッカケになるかもしれません。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

無理に正しくあろうと思い詰めないこと、自分の弱さに正直であることも優しさ
ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
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