人と社会

情報があれば、車いすでもいろんなところへ行ける。「WheeLog!」は、みんなでつくるバリアフリー情報マップです。

otobokezizou

 皆様、こんにちは。

 皆様の身近に、車いすを使っている方はいらっしゃいますか?日本には約200万人の車いすユーザーがいると言われています。車いすを使うのは、何も身体的な障害をもつ方だけではありません。高齢により足腰の弱った方、怪我や病気で歩けない方、妊娠中の女性、ベビーカーを押す親御さんなど、車いすは私たちが思っているよりもずっと身近な存在なのです。しかし、車いすユーザーさんは普段、ちょっとしたことに不便を感じています。車道から歩道に上がる段差、ホームと電車の隙間、狭い通路、テーブルの高さ、座ったままでは届かない位置にあるボタンなど、多くの人たちにとっては何でもないことでも、車いすユーザーさんにとっては不便さや困難さを生む障壁(バリア)となっています。観光立国やユニバーサル社会を目指す日本にとっても、バリアフリーの推進は喫緊の課題となっています。

そこで今回は、世の中にある物理、情報、制度、そして心のバリアを解消すべく取り組まれているNPO法人「WheeLog」さんについてお話ししたいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、「車いすでもあきらめない世界」の実現に少しでも関心を持って頂ければ嬉しいです。

 障害者や高齢者、ベビーカー利用者などの移動や日常生活に困難を抱える人たちに向けて、バリアフリー情報を発信し、社会全体の更なるバリアフリー推進・普及のために活動されているNPO法人です。

2017年にリリースされた地図アプリ「WheeLog!」は、車いすユーザーさんが通った道や利用できる施設・設備を投稿して共有するプラットフォームであり、全ての移動困難者にとって役立つ情報が提供されています。また、人に助けられることが多い車いすユーザーさんにとっては、自分の体験が他の誰かの役に立つ、双方向の助け合いの場にもなっています。

=ミッション=

車いすでもあきらめない世界をつくる!

=活動方針=

情報で人生の選択肢を広げるすべての人の心の壁をなくすフラットな社会を世界に広げる

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

思いさえあれば誰もがSDGsに貢献するができる仕組みが評価され、2023年12月には、第7回ジャパンSDGsアワード「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」が贈られました。

2. 日本のバリアフリー事情

2-1. 車いすを必要とする人たち

 現在、日本には約200万人の車いすユーザーがいると言われています。車いすは、わずか数センチの段差や隙間があるだけで、移動できなくなってしまいます。そのため、車いすユーザーさんは、「行きたい」よりも、物理的に「行けるかどうか」で行き先を選ぶ傾向にあり、行動の選択肢が狭められています。車いすを使うのは、何も身体的な障害をもつ方だけではありません。高齢により足腰の弱った方、怪我や病気で歩けない方、妊娠中の女性、ベビーカーを押す親御さんなど。車いすは、私たちが思っているよりもずっと身近な存在であり、誰もがいつかはお世話になる日が来るのです。だからこそ、暮らしやすい社会のために、私たち1人ひとりがバリアフリーについて考えることには意味があるのです。

2-2. 日本のバリアフリーの現状と課題

 欧米と比べれば、日本のバリアフリーはまだまだ遅れています。しかし、優れている点もたくさんあります。例えば、スロープやエレベーター、多目的トイレ、車いす用スペースなど。今では、公共施設・交通機関だけでなく、商業施設にも当たり前に設置されるようになりました。また、「バリアフリー法」改正(令和2年)「心のバリアフリー認定制度」の創設など、誰もが社会に参画できる機会が得られるように、ハード面だけでなくソフト面でのバリアフリーも日々進展しています。

提供:国土交通省「バリアフリーのさらなる推進に向けて」

一方、バリアフリーの「情報」についてはどうでしょうか?日進月歩でバリアフリー化が進んでいても、必要としている人たちに知られていなければ、本当の意味でのバリアフリーとは言えません。実際、車いすユーザーさんの多くは、バリアフリー情報の収集にとても苦労されています。行き先の情報が不足したままでは、安心して外出することはできませんし、行ってみたいという気持ちにもなれません。また、英語によるバリアフリー情報の発信も少ないため、日本に訪れたいと考えている外国人の車いすユーザーさんにもあまり伝わっていないのが現状です。これらの「情報」のバリアを解消することが、日本のバリアフリーを推し進める上での課題の1つになります。

提供:内閣府「令和5年度バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書」

3.「WheeLog」の取り組み

 WheeLogさんは「車いすでもあきらめない世界」の実現を目指し、誰もが社会に参画できるよう、世の中にある4つのバリアを解消する取り組みを行っています。中でも、「情報」のバリア解消へのアプローチは画期的で、目を見張るものがあります。

参考:特定非営利活動法人WheeLog「ホームページ」

参考:LIFULL STORIES「車椅子だから“しょうがない”、なんてない。」

① 情報のバリア解消 -バリアフリー情報の発信

 「情報」は、私たちの人生の選択肢(=可能性)を広げてくれます。バリアフリー情報があれば、移動に困難を抱える車いすユーザーさんも外出の機会が増え、社会との繋がりを持つことができます。地図アプリ「WheeLog!」は、「みんなでつくるバリアフリーマップ」です。バリアフリー情報の提供やQ&A機能、ユーザー体験の共有を通じて、車いすユーザーさんの「行ってみたい」という願いを「行ける」という選択肢に変えてくれます。ユーザーさんの体験が共有されるごとに、アプリ内のバリアフリー情報が充実していく仕組みのため、使う度により使いやすいマップになっていきます。また、経済的に余裕のない人でもバリアフリー情報が得られるように、WheeLogさんは、リリース開始時よりこのアプリの無償提供・利用を貫いています。

梅うさぎ
梅うさぎ

アプリで提供されるバリアフリー情報は10の言語に対応しているから、外国人の車いすユーザーさんにとっても使いやすい仕様になっているよ。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

事故に遭い、塞ぎ込んでしまった車いすユーザーさんの中には、「WheeLog!」を御守りとすることで一歩を踏み出せた方もいらっしゃいます。

② 心のバリア解消 -心のバリアフリーの醸成

 全ての課題解決は、知ること、関心を持つことから始まります。WheeLogさんは、体験授業や企業研修、車いす街歩きイベントなど、車いすユーザーさんへの理解を深めて頂く取り組みも実施しています。また、これらのイベントは、車いすユーザーさんの外出するきっかけにもなり、社会に対する不安を和らげ、前向きな気持ちになって頂くことにも繋がっています。

③ 制度のバリア解消 -バリアフリー制度の推進

 国への政策提言(アドボカシー)や普及・啓発活動を通して、法制度の面から更なるバリアフリー化を推進しています。海外のバリアフリーの好事例を参考にしながら、新たな政策へと繋げ、車いすユーザーさんがより安心して生活できる環境づくりに取り組んでいます。

④ 物理的なバリア解消 -バリアフリー環境の改善

 暮らしやすい社会のために、やはりハード面でのバリアフリーは不可欠です。公共施設や観光地などでバリアフリー調査を実施し、車いすユーザーさん視点で調査した結果をもとに改善案を作成・提案しています。これらの活動を通して、街や建物のバリアフリー化を推し進め、車いすユーザーさんの外出や活動範囲、社会参画の機会を広げています。

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 この社会には本当に多様な人たちがいます。年齢や性別、生まれ持った性格や身体的特性、受けてきた教育、育ってきた環境、文化、宗教、大切にしている価値観などなど。しかし、これまでの社会は、大多数を占める人たちに合わせて築かれてきました。ユニバーサル社会に向けて動き出した日本でも、まだまだ超えるべき「バリア」は多く存在しています。物理的なバリア、制度のバリア、心のバリア… 一度作られてしまったバリアを無くすには長い時間とコストが掛かります。ですが、「情報」のバリアだけは違います。誰もが情報発信できる時代だからこそ、必要としてる人たちに適切なバリアフリー情報を提供することは今すぐにできます。車いすユーザーさんのための地図アプリ「WheeLog!」は、その好事例なのだと私は思います。少し意識を向けて見れば、皆様の周りにもきっと、そういったバリアフリーの工夫や取り組みがあるはずです。まずは、そういった優しさに気づくことから始めてみましょう。皆様1人ひとりの優しさが、「車いすでもあきらめない世界」の実現に繋がることを願っています。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
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