人と社会

「ソーシャルビジネス」には、社会を良くしたいという想いと革新的なアイディアが詰まっています。

otobokezizou

 皆様、こんにちは。

 ソーシャルビジネス」という言葉を聞いたことはありますか?この新しいビジネスの在り方は、グラミン銀行とその創始者ムハマド・ユヌスさんがノーベル平和賞(2006年)を受賞した頃から注目を集めるようになりました。今回は、そんなソーシャルビジネスについてのお話です。この記事が皆様の理解の助けになれば幸いです。

 「ソーシャルビジネス」とは、市場から「儲からない」という理由で取り残された社会課題にビジネスの力で挑み、解決を目指す事業及び、団体のことを指します。

 あらゆるビジネスは、何らかの課題を解決するために存在しています。働いてお金が発生している以上、社会に必要とされています。ただ、従来のビジネスが対象としているのは、市場・消費者ニーズがあるもの、つまり、儲かりやすいものに限られます。その不満や不便を解消することで、十分なリターンが見込める人たちをお客様としています。一方、ソーシャルビジネスが対象とするのは、市場から見放され、政府・自治体でも有効な対応がなされていない社会課題です。例えば、子どもの貧困、差別、過疎化、空き家、水不足、フードロス、環境破壊などなど、数えれば切りがありません。しかし、共通点が1つあります。それは、いずれも「効率」を追求し続けたことで引き起こされた結果であるということ。効率の追求…現代を生きる私たちならば、思い当たる節はあるはずです。重要だけれど、非効率だからと放置されてきた、そんな社会課題の解決を目的に事業を立ち上げ、取り組んでいるのが、ソーシャルビジネスなのです。

社会課題

2. ソーシャルビジネスの特徴

ソーシャルビジネスの特徴

① 従来の「非効率」を前提とした新しいビジネスモデルをつくる

 上述の通り、社会課題は「非効率」ゆえに取り残されてきました。ソーシャルビジネスは、そのような「非効率」を含めてビジネスを再構築し、試行錯誤を繰り返しながら新しい仕組みをつくっています。もちろん簡単なことではありません。コスト構造はどうしても高くなりますし、お客様に善意だけで買ってもらえる商品・サービスは長続きしません。非効率でありながらも、「モノが良いから買いたい、サービスが良いから使いたい」と思って頂かなくては、お客様に選び続けてもらえません。世の中にあるソーシャルビジネスは、社会を良くしたいという想いだけでなく、そのような知恵や革新的なアイディアが詰まっています。

代表例:グラミン銀行(貧しい人々のための銀行)

 ムハマド・ユヌスさんが1983年に創設した金融機関で、貧しさ故に融資を受けられない貧困層向けに「無担保の低利少額融資」を行なっています。従来の銀行は、担保となり得る資産、または十分な返済能力が見込める中間所得者以上にしか融資せず、お金を本当に必要としている貧困層は相手にしていませんでした。お金を貸しても返ってこない、お金を貸しても何も変わらない、と言うのが当時の常識だったからです。

 それを変えたのが、ユヌスさんとグラミン銀行でした。土地や資産を持たない貧しい人たち(特に、母親たち)に、家族以外の誰かと「5人組」をつくってもらい、そのグループを対象に融資したのです。リスクが高く、収益化ができないと疑問視されていましたが、借り手のやる気を高める様々な仕掛けによって、その返済率は95%以上と非常に高いものでした。今では、その有効性が認められ、「マイクロクレジット」「マイクロファイナンス」として世界で広く知られております。そして、グラミン銀行は、現在でも貧困層への経済的自立を支援しています。

参考:Grameen Bankホームページ

② 財務指標よりも、社会的インパクトを重視する

 従来のビジネスでは、売上高や営業利益、収益率などの財務指標をもとに事業経営が評価されています。しかし、社会課題の解決を目的とするソーシャルビジネスでは、どれだけの対象者に好影響を与えられたか、対象者の生活をどれだけ改善させることができたか、どれだけの利用者・パートナーを募ることができたか、といった独自の評価軸が用いられます。この社会的インパクトの大きさによって、社会課題の解決にどれだけ貢献できたか、どれだけ近づいたのかを定性的・定量的に評価しています

目の白いとり
目の白いとり

賛同してくれるパートナーやインパクト投資を募る際にも、社会的インパクトの測定・評価は大切になってくるよ。

③ 社会性と事業性(持続性)の二兎を追う

 社会課題は一朝一夕では解決できません。数年、数十年かけて取り組んでいくものです。だからこそ、ソーシャルビジネスは継続的に活動を行っていくために、しっかりと利益を出し、公的支援に頼らずとも自走できるようにならねばなりません。そして、利益を事業に再投資し、成長させていくことで、社会的インパクトを極大化させていく。そうすることではじめて、社会課題の解決に近づいていくのです。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

「儲からなかったから、続けられませんでした」では、格好がつきませんからね。

3. ソーシャルビジネスを支える仕組み、応援する人々

 ソーシャルビジネスの多くは、社会課題の解決を目的に立ち上がったベンチャー企業です。一般的に、ベンチャー企業が10年後に残っている確率は6%と言われています。社会課題を解決しようと立ち上がる起業家の前には、より険しい道のりが待っています。しかし、社会には彼ら彼女らを支える仕組み、応援する人々が存在しています。ここでは、その一例を紹介させて頂きます。

➀ ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)

 社会課題の解決に取り組む革新的なソーシャルベンチャーと有志のパートナーさんたちがチームとなって、社会変革を目指すコミュニティです。投資・協働プログラムを提供しており、最大2年間の協働を通じて、対象団体の経営基盤の強化や社会的インパクトの拡大を支援しています。面白いのは、パートナーさん自らが投資し、経営支援に本気でコミットしている点です。身銭を切っているだけに、パートナーさんの覚悟は生半可なものではありません。支援を続ける中で、協働先団体の一員として正式加入するケースとあると聞きます。

参考:SVP東京ホームページ

② 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)

 2018年7月、経団連により設立された一般財団法人です。「休眠預金活用法」に則り、2009年1月1日から10年以上動きのない預金(休眠預金)を活用して、行政では対応することが困難な社会課題の解決を目指す民間のイノベーティブな活動を支援しています。特に、子供及び若者の支援、日常・社会生活を営む上で困難を有する者の支援、地域活性化等の支援に関する活動を重視しています。日本では前例のない実験的な社会制度ではありますが、貯蓄率の高い日本だからこその仕組みと言えます。

参考:JANPIAホームページ

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

日本では、毎年1,200~1,400億円の休眠預金が発生していると言われています。

木の葉きつね
木の葉きつね

そのままにしておくには、もったいないお金だね。

日本ベンチャー・フィランソロピー基金(JVPF)

 中長期の資金提供とビジネス・スキルを活用した経営支援を通じて社会的事業を育成・支援し、その社会的インパクトを拡大することを目的に設立されたに日本初の本格的なベンチャー・フィランソロピー基金です。

参考:JVPFホームページ

おとぼけ地蔵
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フィランソロピーとは、ギリシャ語の愛(Phil)と人類(Anthropy)を合わせた造語です。聞きなれない言葉ですが、要するに慈善活動や社会貢献活動のことです。

④ 株式会社ボーダレス・ジャパン (ボーダレスグループ)

 社会起業家として有名な田口一成さんが経営する「社会企業家のためのプラットフォーム」です。1社では生み出せない大きな社会的インパクトを生み出すために、「1000の社会起業家を生み出し、1000の社会課題を解決すること」を目標にしています。グループ会社それぞれが独自経営を行いながら、資金やノウハウをお互いに提供・共有し合い、新しい仲間の創業・操業支援を行う「カンパニオ」の仕組みが特徴です。2024年時点で、世界13ヵ国で51のソーシャルビジネスを展開しています。

参考:株式会社ボーダレス・ジャパン ホームページ

おとぼけ地蔵
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こうした社会起業家を次々と生み出すビジネスモデルが評価され、2019年度には「グッドデザイン賞 ビジネスモデル部門」にも選ばれました。

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 「経済」という言葉には、もともと「世を治め、民の苦しみ救う(経世済民)」という意味が込められています。社会課題の解決に本気で挑む「ソーシャルビジネス」は、それを体現する1つの形なのだと思います。もちろん、取り組みの形は様々です。社会起業家として自ら事業を立ち上げる、有志のパートナー(プロボノやボランティア)として参画・支援する、投資家としてソーシャルビジネスに投資する、NPO団体に寄付をする、そして、1人の生活者・消費者として社会に優しい商品・サービスを選ぶ、などなど。「社会を良くしたい」という気持ちは、皆様の中もきっとあります。無理のない範囲で、小さな行動を起こしてみてください。社会を良くしたいと願う私たち1つひとつの選択が、社会課題の解決へと繋がっていくはずです。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

一歩一歩
ABOUT ME
おとぼけ地蔵
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エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
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