あなたにしか助けられない命がある。“生きたい”を支える「骨髄バンク」に、あなたの勇気と優しさを。

皆様は、骨髄移植について、どのくらい知っていますか?
献血の窓口やテレビCMで見聞きしたことがある方は多いと思います。でも、その仕組みや現状を「ちゃんと知っている」方は、意外と少ないのではないでしょうか。実は、毎年約2,000人の患者さんが骨髄移植を待ち望んでいます。けれど、移植を希望する患者さんのうち、実際に移植を受けられるのは約2人に1人… 助かる可能性があるにもかかわらず、ドナー不足によって移植に辿り着けない患者さんが多くいらっしゃいます。
そこで今回は、命をつなぐ「骨髄バンク」の仕組みについて、お話ししたいと思います。ある日突然、大切な人が「血液の病気」になったとき、そこに救いがある社会であってほしい。そのために、いま私たちにできることは何か。この記事が、そのことについて考える小さなキッカケになれば幸いです。

白血病などの「血液の病気」に苦しむ患者さんと、骨髄・造血幹細胞を提供してくださるドナーさんをつなぐ公的事業です。国内では、公益社団法人「日本骨髄バンク」さんが、日本赤十字社と医療機関、地方自治体と協力しながら、その役割を担っています。
ドナー登録自体はとても簡単で、献血のついでに行う「わずか2mlの採血」で完了します。また、2026年1月からは、綿棒状のキットを使ったスワプ登録のトライアルも進んでいます。将来的には、自宅にいながらドナー登録できるようになると期待されています。

2023年9月からスタートした#つなげオレンジプロジェクトでは、ドナー登録や骨髄提供がもっと当たり前に、もっと応援され、もっと感謝し合える社会を目指して、さまざまな活動が行われています。

2. 移植を待ち望む人たちの現実
2-1. 誰にでも起こりえる「血液の病気」

血液は、私たちの体内を循環する赤い液体 ―細胞の1つひとつに酸素や栄養を届け、ウイルスや細菌と戦い、傷ついた身体を修復する。そのどれもが、私たちが生きていく上で欠かせない働きです。
血液の病気とは、正常な血液が作られなくなり、命を支えるこれら働きが少しずつ失われていく病です。「血液のがん」とも呼ばれています。原因は不明で、子どもから大人まで、誰にでも発症する可能性があります。
幸い、医療技術の進歩により、薬物療法や放射線治療で治るケースも増えてきました。しかし、「移植」が、唯一の選択肢となる患者さんも多く、毎年約2,000人が骨髄バンクを介した移植を必要としています。
2-2. ドナー登録率わずか1%

移植には、患者さんとドナーさんのHLA型(白血球の型)が適合していることが条件になります。この型は一般的な血液型とは異なり、数万種類以上も存在します。血縁にある兄弟姉妹間でも適合する確率は4分の1。非血縁者間ではさらに低く、数百~数万分の1という確率でしか一致しません。患者さんにとって、適合するドナーさんとの出会いは、まさに奇跡と言えるのです。
これまでの普及・啓発活動のお陰で、骨髄バンクのドナー登録者数は約56万5,000人に達しました(2026年1月末時点)。しかし、ドナー登録可能な年齢人口(18〜54歳)で見れば、全体のわずか1%程度に留まっています。実際、移植を希望する患者さんのうち、2人に1人は移植を受けられない状況にあります。
また、ドナー登録者の半数以上は40〜50代です。満55歳の誕生日を以って、登録取り消しとなるため、今後10年以内に全体の約41% ―約23万人がドナーを「卒業」していくと見込まれています。これから先、20〜30代の若い世代の理解と参加が、ますます重要になってきます。
参考:日本骨髄バンク「骨髄バンク事業の現状(2026年4月末現在)」
2-3. 立ちはだかる「理解の壁」

ドナー不足の他に、もう1つ深刻な課題があります。それは、ドナーについての「理解」が十分に広がっていないこと。実は、患者さんとのHLA型が適合しても、ドナーさんの都合がつかなかったり、連絡が取れなくなったりするケースが多く報告されています。適合したドナー候補者のうち、年間3,300人以上が、提供まで辿り着けずにいるのが現状です。
患者さんからは、「ドナーが見つからない辛さよりも、見つかったのに断られる辛さの方が苦しい…」という声も聞かれます。だからこそ、“なんとなく”ではなく、正しく理解し、納得した上でドナー登録することが大切なのです。
3. ドナー登録から提供までの7Step
知らないことへの不安を少しでも減らせるように、ここでは、ドナー登録から提供までの大まかな流れを紹介します。

参考:ドナーのためのハンドブック(日本骨髄バンク発行)
Step1:ドナー登録

ドナー登録は、「骨髄バンクドナー登録申込書」への記入と、HLA型(白血球の型)を調べるための2mlの採血で完了します。
どちらも、献血センターや献血ルーム、献血バス、保健所などで簡単に行うことができます。なお、登録されたドナー情報は厳重に管理されるため、第三者はもちろん、患者さん側に伝えられることもありません。

海外で主流のスワプ登録は、日本でも検討が進んでいます。登録のハードルが大きく下がる嬉しいニュースです。
Step2:適合通知

登録したHLA型が患者さんのものと適合すると、骨髄バンクさんから「オレンジ色の適合通知」と、携帯電話への「ショートメッセージ」が届きます。登録後すぐに連絡が来ることも珍しくありません。
このタイミングで、改めて提供意思を確認することになります。提供意思に変わりはないか、辞退するか、7日以内に回答します。
Step3:確認検査

提供意思に変わりなければ、確認検査へ進みます。認定医療機関にて、コーディネーターさんによる詳しい説明と、調整医師による問診・採血(約30ml)が行われます。所要時間は、1~2時間程度です。

骨髄バンクのコーディネーターさんは、最後までドナーさんに寄り添ってくれる心強い存在です。
Step4:最終同意面談(重要)

確認検査後2~6週間ほどで、最も移植に適したドナーさんが第一候補者に選ばれます。その後、ドナーさん本人とご家族の代表者の意思確認を行う「最終同意面談」が行われます。
最終同意書へのサインを以って、患者さんは移植の準備に入ります。そのため、同意後の辞退は、患者さんの治療継続に大きな影響を与える可能性があります。ここでの意思決定は、とても重要な意味を持つのです。

ドナーさん本人が提供を希望していても、ご家族から反対されるケースもあります。候補者に選ばれる前から、提供について話し合っておくと安心です。
Step5:採取前の健康診断
提供の約1カ月前になると、入院・採取を行う病院で健康診断を行います。最終同意後は、不摂生や怪我などに気を付けながら、採取に備えた健康・体調管理を行います。
Step6:骨髄/末梢血幹細胞の採取・提供
提供方法には2つの種類があり、どちらを選ぶかはドナーさんに委ねられます。入院が必要になりますが、ドナーさんの費用負担は一切ありません。そして、どちらの場合でも、ドナーさんの安全が最優先されます。

腸骨(骨盤上部)に針を刺して、骨の中にある骨髄液を採取します。全身麻酔で行われるため、痛みはありません。所要時間は2〜4時間程度です。麻酔が切れた後に、採取部分の痛みや発熱が生じる場合がありますが、多くは一時的なものです。採取後2〜3日で退院し、復職・復学されるケースが一般的です。

一般的には、このイメージが強いね。

脊髄(背骨)に針を刺すわけではないので、ご安心を。

骨髄液の中にいる「造血幹細胞のみ」を血中から抽出・採取する方法です。白血球を増やす薬(G-CSF)を3〜4日投与した後、血中に押し出された造血幹細胞を、成分献血のように採取します。所要時間は3〜4時間程度です。採取中は両腕を動かすことができませんが、医療スタッフが待機し、定期的な体調チェックを行ってくれます。副作用として頭痛や骨の痛みが生じる場合がありますが、多くは一過性のものです。採取の翌日には退院ができます。
G-CSFは1991年に承認された安全性の高いお薬です。副作用として、頭痛や骨の痛み(腰痛、関節痛など)が生じる場合がありますが、多くは一過性のものです。採取の翌日には退院し、復職・復学することが可能です。

G-CSFは1991年に承認された安全性の高いお薬です。
Step7:退院&アフターフォロー
退院後も、コーディネーターさんが定期的に健康状態をフォローしてくれます。採取後の健康診断など、体調が回復するまで継続的なサポートが受けられます。

4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
実は、私自身もドナーとして造血幹細胞を提供した経験があります。ドナー登録や提供に対して、不安な気持ちを抱くのは、とても自然なことだと思います。私も、最初から迷いがなかったわけではありません。でも、当事者として関わったからこそ、見えた景色がありました。
適合通知が届いたとき、私は不思議なご縁を感じました。最終同意書にサインしたとき、「もう自分ひとりの身体ではない」という意識が芽生えました。そして、患者さんの命を救うために、たくさんの人たちの優しさが繋がっていることを知りました。その輪の1人になれたことを、今でも静かに誇りに思っています。
世の中には、皆様にしか助けられない命があります。皆様の勇気と優しさは、移植を待ち望む患者さんだけでなく、そのご家族の未来を支える力になるかもしれません。この記事を読んで少しでも関心を持って頂けたなら、次の献血のタイミングで、ドナー登録について考えてみてください。
自分に優しく、人に優しく。
自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。
それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。


