子どもたちが大切に育てられる世の中に。“子どもを支える人”を支える「チャイボラ」

皆様は、親元で暮らすことができない子どもの存在を知っていますか?
児童養護施設や里親家庭など、いわゆる「社会的養護」のもとで生活している子どもたちです。そこでは、施設の職員さんや支援に関わる大人たちが、子どもたちの日々の暮らしと安心を支えています。一緒に食卓を囲むこと、学校であった小さな話に耳を傾けること、ふとこぼれた不安や涙に寄り添うこと。
様々な事情を抱えてきた子どもたちが、心の傷を癒やし、自分らしさとあたりまえの日常を取り戻していくには、こうした「頼れる大人」の存在が不可欠です。しかし、その現場では深刻な人手不足が続いており、その負担が、子どもたちのために働く職員さんたちに重くのしかかっています。これは、特別な誰かの話ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。
そこで今回は、子どもたちが大切に育てられる世の中を目指して、“子どもたちを支える人”を支えるNPO法人「チャイボラ」さんについてお話ししたいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、社会的養護という子どもたちの人生に寄り添う仕事と、その現場で起きている課題、そして、それを変えようと奮闘している人たちに少しでも関心を寄せて頂けたら嬉しいです。

子どもたちに質の高いケアと安心を届けるために、社会的養護施設で働く人たちの採用・人材育成・定着を支援しているNPO法人です。大人が笑顔になれば、子どもたちも安心して笑える。チャイボラさんでは、「ケアする人をケアすること」こそが、持続可能な子ども支援につながるという考えのもと、子どもたちの日常の一番近くで寄り添う施設職員さんに特化したサポートを展開しているのが特長です。
社会的養護施設に特化した求人サイト「チャボナビ」や現役職員さんのメンタルケア、施設見学会やお仕事プチセミナーなどの広報活動まで幅広い取り組みを行っています。

2024年には、こども家庭庁「児童相談所職員の採用・人材育成・定着支援事業」に採択され、Forbes JAPAN「今注目のNPO 50」にも選出されるなど、社会的評価の高い取り組みです。

2. 限界を迎える社会的養護の現場
2-1. 社会的養護のもとで暮らす子どもたち

「社会的養護」とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に保護・養育すること。現在、虐待や親の病気、経済的困窮、死別などの理由により、親元で暮らせない子どもたちは全国で約42,000人います。近年、新たに保護される理由で最も多いのが、“虐待”であり、全体の6割以上を占めています。このような子どもたちにとって、社会的養護は、ただの生活の場ではありません。心の傷を癒やし、信頼できる大人のもとで、自分らしさと「あたりまえの日常」を取り戻すための安全基地なのです

社会的養護の基本理念は、「こどもの最善の利益のために」「社会全体でこどもを育む」こと。
参考:こども家庭庁「社会的養育の推進に向けて(令和8年2月)」
2-2. 深刻な職員不足 ―重くのしかかる現場の負担
乳児院や児童養護施設など、親元で暮らせない子どものための施設は全国に約1,300ヶ所あり、社会的養護全体の約8割を担っています。施設で働く職員さんは、そんな子どもたち一人ひとりに寄り添い、日々の生活や自立を支えています。けれど、多くの施設が深刻な「職員不足」という課題を抱えており、子どもたちのためにできる支援に限界が生まれつつあります。

施設職員さんの仕事は、子どもたちの食事や入浴といった日常のお世話から、学習支援、精神的なケア、さらには学校や児童相談所との調整まで、多岐に渡ります。昼夜を問わない激務に加え、心に傷を負った子どもたちと向き合うのは、職員さんたちにとっても心理的負担が大きいものです。そのため、志半ばで現場を離れてしまう職員さんも少なくありません。人が辞めれば、残された職員さんの負担がさらに増す…そんな「負の連鎖」が起きているのです。
2-3. 現場の本音 —欲しいのはモノじゃなくて、人
施設の職員不足は、ただの労働問題ではありません。それは、社会的養護を必要とする子どもたちの受け皿そのものが失われることを意味します。募集しても人が集まらないために、子どもたちの受け入れを制限したり、最終的に閉所に追い込まれた施設もあります。

全体のおよそ7割が「人材の確保・育成・定着は、積極的に取り組むべき課題である」と認識しています。しかし、人の少ない中、ギリギリのところで踏ん張っている現場では、日々の業務を回すだけで精一杯です。採用活動にまで手が回らず…新人が入ってきても十分なOJT教育ができない… その結果、職員もノウハウも定着しない…対策を講じるための体力的な余裕も、精神的なゆとりもない。それが、現場の実情なのです。
参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和6年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業-報告書」
3.「チャイボラ」の取り組み
職員さんが心身ともに健やかに働ける環境があってこそ、子どもたちに質の高いケアと安心を届けることができる。その信念のもと、NPO「チャイボラ」さんは、日本唯一の社会的養護総合情報サイト「チャボナビ」をはじめ、人と施設をつなぐ様々な取り組みを行っています。

➀ 社会的養護施設のための総合情報サイト「チャボナビ」
チャイボラさんの最大の特長が、社会的養護施設で働きたい人と施設をつなぐ総合情報サイト「チャボナビ」です。

これまでの求人情報はアナログで閉鎖的なものが多く、施設の雰囲気が分かりにくいものばかりでした。施設で働きたいと思っていても、欲しい情報がなかなか見つけれなかったのです。そこで、チャイボラさんは、全国の施設情報を網羅し、現場の雰囲気や職員さんの想いが見える独自のプラットフォームを構築しました。「チャボナビ」では、施設の理念や勤務スケジュール、職員インタビューなどの必要な情報がWeb上で可視化されています。これにより、求職者は施設のリアルな姿を知った上で応募できるようになり、ミスマッチによる早期離職を防ぐことに繋がっています。
また、行政支援の制度上、広報費を捻出できない施設側の負担を解消するため、プラットフォームへの情報掲載を完全無料で提供しています。2025年時点で、全国の児童養護施設の登録率は50%を超えており、人と施設を繋ぐ「人材確保のインフラ」として普及しつつあります。

チャボナビを通じた年間採用人数も370人に昇り、現場の大きな支えとなっています。(2025年3月末時点)
② 現場の声を聴き、定着までを支える「伴走型サポート」

人が集まっても、すぐに辞めてしまっては根本的な解決になりません。チャイボラさんは、職員さんが孤立せず、やりがいを持って長く働き続けられるための多角的なサポートも行っています。
例えば、オンライン研修「チャボゼミ」を通じた新任1年目サポートや施設の垣根を越えた職員同士の交流、仕事に慣れて葛藤が生じやすくなる3年目のキャリア研修、さらには24時間対応の匿名相談窓口など。閉鎖的になりがちな現場において、職員さんが「一人じゃない」と感じられる仕組みを作ることで、離職を防ぎ、子どもたちとの継続的な関わりを守っています。
③ 社会の意識を変える「魅力発信」

支援の輪を広げるためには、施設の持つ「大変そう…」というイメージを、「子どもの人生に伴走できる喜びのある仕事」へとアップデートしていくことも大切です。
チャイボラさんは、未来の担い手となる学生向けの出張授業を精力的に行い、現役職員さんと一緒に、現場のリアルな情報と仕事の魅力を伝えています。加えて、年間700人近くが参加する「オンライン見学フェア」や毎月開催される児童養護施設「お仕事プチセミナー」、SNSでの日常的な発信、さらにはメタバース上での交流イベントなど。様々なアプローチを通して、社会的養護の認知度向上に努めています。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
子どもたちが健やかに成長し、未来への希望を育むためには、まず支える側の大人が笑顔でいられることが、何より大切です。親元で暮らせない子どもたちに、安心できる居場所とあたりまえの日常を届ける。社会的養護の現場には、日々懸命に子どもたちと向き合う施設職員の方々がいます。そして、その支える人たちを陰からそっと支えているのが、NPO「チャイボラ」さんです。こうした支え合いがあるからこそ、子どもたちは明日も明後日も、その先の未来でもずっと笑顔でいられる。それが、持続可能な子ども支援に繋がるのだと、私は思います。
私たちが直接現場に立ち、子どもたちを抱きしめることは難しいかもしれません。けれど、こうした活動を知り、心を寄せ、思いを馳せることならできます。皆様のその小さな想いが、波紋のように広がり、いつか「施設で働いてみようかな」と思う誰かの背中を、そっと押すかもしれません。それこそが、チャイボラさんが目指す「子どもたちが大切に育てられる世の中」への確かな一歩になるはずです。
自分に優しく、人に優しく。 自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。 それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。


