無理をしない優しさを。地球を思いやり、身体にも心にも嬉しい、菜食中心の食事「プラントベース」

皆様、こんにちは。
かつて日本には、精進料理や一汁一菜といった野菜中心の食文化がありました。しかし、戦後の高度経済成長期を経て、急速に「食の欧米化」が進み、お肉や乳製品などの動物性食品が家庭の食卓に並ぶようになりました。牛肉、豚肉、鶏肉、はたまた馬肉や羊肉など、現在では、お肉を食べるのが一般的です。子どもの頃、学校から帰ると夕ごはんにハンバーグが出て心が躍った、そんな思い出を持つ方も多いはず。
けれども、近年、お肉を食べる行為そのものが、様々な環境問題・社会問題を引き起こしていることが指摘されています。そんな中、食のサステナビリティの観点から「菜食中心の食生活」に切り替える人たちが増えています。そこで今回は、世界中で注目を集めている地球にも身体にも心にも優しい食事スタイル「プラントベース」についてお話ししたいと思います。この記事が、皆様が食のライフスタイルを見つめ直す良いキッカケになれば幸いです。

プラントベースとは、野菜および、植物由来の食べ物を中心とした食事スタイルです。卵・乳製品を含む動物性食品を食べない厳格なヴィーガンとは異なり、無理のない範囲で、菜食中心の生活を心がけているのが特徴です。
宗教・文化的な理由だけではなく、健康志向やアニマルウェルフェア、環境配慮への関心から、この食事スタイルを取り入れている人たちが増えています。

日本のヴィーガン率は2.4%、ベジタリアン率は5.9%、そして、週に何度かだけお肉を控えるフレキシタリアンの方を含めると全体の約20%もいらっしゃいます。

出典:Vegewell「第4回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」
2. プラントベースの潮流
Plant-based foodsという用語は、栄養学の世界で1980年代から存在していました。最近まで特に注目されることはありませんでしたが、健康志向の高まり、世界的な食糧危機への不安、動物福祉(アニマルウェルフェア)や環境配慮の観点、そして、フードテックの発展などを背景に、この10年間でプラントベース食品への関心と需要が急速に高まりました。IMARCグループの市場調査レポート(2025)によると、日本のプラントベース食品市場は、2024年時点で12億ドルに達し、2033年には27億ドルにまで成長すると見込まれています。

2-1. 健康メリット

“野菜が健康に良い“というのは、もはや常識。米国栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)も、低脂肪でビタミン・ミネラル・食物繊維の豊富なプラントベースの食事が生活習慣病の改善に効果的である、との公式見解を述べています。腸内環境の正常化、LDLコレステロールの低下、糖尿病リスクの低減、肥満や高血圧の予防など、プラントベースの食事によって得られる健康メリットは挙げれば切りがありません。
また、私たちの身体の土台となるタンパク質についても、豆類やナッツ類を含む様々な植物性食品から摂取できるため、菜食中心の食事でも栄養が不足することはありません。栄養バランスを適切にコントロールすれば、乳幼児や成長期の子どもであっても菜食だけで健康的に育ちます。現在では、先進国で増加している肥満や高血圧の子どもの“治療食”としても利用されています。

”畑のお肉“と呼ばれる大豆や大豆製品のアミノ酸スコアは、文句なしの100点!

2-2. 環境負荷低減
爆発的な人口増加と人々の生活水準の向上に伴い、食肉や乳製品の消費量もまた急速に増加してきました。日本だけを見ても、1960年から2022年までの約60年間で、国民1人あたりの肉の消費量は10倍以上に跳ね上がっています。ですが、それらの生産を担う「畜産」は、現代において、深刻な環境問題・社会問題を引き起こしている最大要因の1つになっています。

畜産動物の飼育には、広大な放牧地や大量の飼料を生産する土地を確保しなければならず、そのために多くの森林が焼き払われています。南米のアマゾンでは、既に森林の約7割が放牧地に変えられており、地球温暖化を加速させています。また、畜産動物の呼気や糞尿処理の過程で発生するメタンガスは、二酸化炭素の25倍上の温室効果があります。加えて、牛肉1kgを生産するのに、11㎏の穀物と20,000ℓもの水が消費されています。豚肉や鶏肉の生産についても同様です。食糧生産の観点から言えば、畜産は恐ろしく「非効率」なのです。畜産と肉食が、世界で蔓延している飢餓や水不足に繋がっているのも頷けます。
裏を返せば、私たちがお肉を控えること、プラントベースの食事に切り替えることは、これらの問題を改善することに繋がるのです。

2-3. 動物福祉への配慮
畜産という恐ろしく「非効率」な方法で、どうやって世界の食肉需要に応えればいいのか?そうして行き着いてしまったのが、「アニマル・マシーン」と呼ばれる工場式畜産です。家畜を財産として大切に育てる伝統的な遊牧とは対照的に、倫理観を度外視して家畜をモノのように飼育する畜産のことです。欧州では法規制が整備されていますが、放牧できる土地の少ない日本のような国では、今も当たり前のように行われています。
人間のように言葉は持たなくとも、動物たちも喜びや苦しみ、痛みを感じることのできる感受性ある生きものです。お肉を控え、食肉需要を減らすことは、工場式畜産の劣悪な環境下で苦しむ動物たちを減らす(救う)ことに繋がります。誰も傷つけない菜食が、世界中の人々に支持されている理由の1つです。

菜食は“私たち自身と世界を幸せにする生き方“であり、プラントベースはその生き方への大きな一歩になるのです。

参考:著書「まるごと解説ベジタリアン&ヴィーガンの世界」-垣本 充 (監修)
3. プラントベース・スイーツの魅力!
プラントベース食品市場の成長に伴い、プラントベース・スイーツにも注目が集まっています。一方、植物性のみを使ったスイーツは「物足りない」「美味しくない」というイメージを持たれている方も一定数いらっしゃいます。身体の健康だけでなく、“心の安らぎ”をもたらしてくれるスイーツには、普段の食事以上に高いハードルが求められるためでしょう。しかし、卵やクリームといった従来の素材に頼らないからこそ、プランベース・スイーツには、より多彩な素材と創意工夫が活かされています。ここでは、独自のレシピによって、自然由来の本物の美味しさを実現した”こだわりの3品”を紹介させて頂きます。

➀ NISSEI:卵・乳フリーソフトクリーム(万博限定)
ソフトクリームの総合メーカーNISSEIさんが、大阪・関西万博(2025)で提供している“誰もが楽しめるソフトクリーム”です。卵・乳原料を完全排除し、お米や白餡などの植物性原料を使って、ソフトクリームの滑らかさを再現しています。あっさりとした口あたりながら、植物性とは思えないしっかりとした風味が特徴です。
また、コーンには、ありそうでなかった“米粉コーン”を開発・採用しており、グルテンフリーの観点からも嬉しい配慮がなされています。ご家族にアレルギーの子どもやヴィーガンの方がいても、一緒に同じものを食べ、美味しさや喜びの時間を共有することができます。


NESSEI(当時は、日世株式会社)さんは、前回の大阪万博(1970年)で日本のソフトクリーム文化を定着させた立役者でもあります。
参考:NISSEI Mouthful Creations「展示内容|大阪ヘルスケアパビリオン」
② HANDELS VÄGEN:プラントベースアイス(数量限定)
“100%ナチュラルな手づくりアイス“にこだわりを持つHANDELS VÄGEN(ハンデルスベーゲン)さんが、2025年6月19日から数量限定で提供している3種の新作アイスです。乳化剤・安定剤・着色料・香料などを一切使わない”無添加“なのはもちろん、有機カシューナッツミルクを使用した独自配合により、”プラントベースの常識を覆す濃厚でクリーミーな味わい“を生み出しています。また、NPO法人ベジプロジェクト・ジャパンによる”ヴィーガン認証“も取得されています。

価格はやや高めですが、「自然素材100%」「濃厚な味わい」「ハイクオリティ」「厳格なヴィーガン対応」の4拍子が揃った贅沢な一品です。一口食べた瞬間、嘘や罪悪感のない本物のアイスクリームを楽しむことができます。贈答品としてもオススメです。
③ UPBEET! Tokyo:全商品
UPBEET! Tokyo(アップビート東京)さんは、 2018年創業のヴィーガン&グルテンフリー専門ブランドであり、“食文化や環境、健康に配慮したスイーツ”を提供しています。動物性食品だけでなく、白砂糖や小麦粉も使っていません。代わりに、瀬戸三河の3年熟成みりんや木桶仕込み味噌、甘酒などの日本古来の“発酵食品”を取り入れた独自配合によって、“スイーツの新たな魅力”を引き出しています。また、日本ヴィーガン協会によるヴィーガン認証に加えて、イスラム教の方にも配慮した国際ハラール認証も取得されています。

4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
菜食は、私たち自身と世界を幸せにする優しい生き方であり、「プラントベース」はその大きな一歩になります。それは、肉食を完全否定するのではなく、無理をしない優しさで誰もが実践できる食事スタイルです。「ちょっと気になるから試してみようかな」くらいの気軽さで十分です。週に1日だけ、お肉の代わりに大豆ミートを、牛乳の代わりにオーツミルクを、おやつにプラントベース・スイーツを。その小さな選択の積み重ねが、未来の地球と多くの生命を救うことに繋がるのです。それは特別なことではなく、地球市民としての理想的なライフスタイルとして、多くの人たちに受け入れられています。食卓に並ぶ多くの選択肢の中から、皆様が何を選び、何を食べるのか、そして、どんな生き方をしたいのか、この機会に是非、見つめ直してくだされば幸いです。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。
