人と社会

花のある暮らしを文化に。ロスフラワーに新たな命と役目を吹き込むスタートアップ「RIN」

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 新しい門出を祝う入学式や晴れやかな結婚式、大切な人との記念日、そして、誰かに感謝を伝えるとき。振り返ってみると、私たちの人生の節目にはいつも、色鮮やかな「花」がそばにありました。何気ない日常を引き立て、その場にいる人たちを自然と笑顔にしてくれる花は、まさに「美しさと幸せの象徴」と言えます。
けれど、その華やかさの裏側には「フラワーロス」という悲しい現実があります。想像してみてください。ハレの日やイベント会場を美しく飾っていた花たちが、翌日にはゴミとして捨てられてしまう光景を。「もったいない」という気持ち以上に、「役目を終えると捨てられてしまう」という事実に、どこか自分自身を重ねてショックを感じます…

そこで今回は、捨てられるはずだった花に光をあて、新しい価値を生み出している日本のスタートアップ「RIN」さんについてお話ししたいと思います。捨てることが当たり前になった現代社会で、私たちが忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる取り組みです。この記事を読んでくださった皆様の心が、ほんの少しでも豊かになってくれたら嬉しいです。

 規格外で出荷できなかったり、過剰仕入れで溢れた花—そういったまだ美しいのに廃棄されていた花(ロスフラワー)を買い取り、新しい命と役目を吹き込んでいる日本のスタートアップ企業です。
「花のロスを減らし 花のある生活を文化にする」ために、ロスフラワーの再利用をはじめ、ドライフラワーや空間装飾、ブランディング用のアート素材などに変えるアップサイクル事業を展開しています。さらに、花農家さんと消費者の架け橋となるオンラインショップの運営や、専門職「フラワーサイクリスト」の育成など、ただの「もったいない」で終わらせない新しい仕組みづくりにも取り組んでいます。

参考:株式会社RIN「ホームページ」

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

三井不動産との共同プロジェクトは、2023年度グッドデザイン賞を受賞。「環境・暮らし・コミュニティ」を同時に解決する仕組みとして高く評価されました。

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2. 華やかさの裏側で

 曲がった野菜は市場に出せない —それは「花」についても同じです。日本では年間生産量の約3割、約9億本もの切り花が、私たち消費者の目に触れることなく「ゴミ」として捨てられています。この花の大量廃棄(フラワーロス)は、生産・流通・小売・消費のあらゆる段階で発生しています。

参考:農林水産省「花きの現状と課題について(令和7年10月)」

2-1. 厳しすぎる「美の規格」

 他の農作物と同じように、花にも「規格」というものがあります。茎の長さ、太さ、曲がり具合、蕾の大きさ、花の開き具合など。そういった「見た目」で、市場に出せるかどうかが決まります。鑑賞や装飾、贈り物としての用途ゆえに、花にわずかな傷がついただけでも「規格外」とみなされ、廃棄の対象となってしまいます

また、花には「出荷適期」というものがあり、天候の影響で一斉に咲きすぎてしまったり、開花が少し遅れただけでも、市場価値が著しく下がります。その結果、農家さんのもとで丹精込めて育てられた花の1~2割は、出荷されることもなく、畑でそのまま処分されているのです。

馬三郎
馬三郎

花の生育や開花時期を狂わせる地球温暖化や気候変動は、フラワーロスに追い打ちをかけているんだ。

2-2.「消耗品」として捨てられる花

 母の日のカーネーション、クリスマスのバラ、門出を祝うスイートピーなど。冠婚葬祭やハレの日、大きな式典では、当日に向けて花の需要が一気に高まります。しかし、そのほとんどは、役目を終えた翌日に一斉処分されています。日本の花き市場は、こうしたイベント需要に支えられているため、使い捨てられる花の総量も極めて多いのです。
また、「花は日持ちしない」ため、イベントが突然中止になると、大量の花が行き場を失います。「鮮度」という規格に阻まれ、他の用途で使うこともできず、そのまま廃棄されることも少なくありません

3.「RIN」の取り組み

 花が捨てられない社会を目指す。それは、一輪ごとの不揃いな個性を認め合うこと、日常の小さな幸せに気づく心を取り戻すことにつながります。その哲学のもと、RINさんは、ロスフラワーを活用した事業を、「心の通い合い」をデザインしています。

➀ 日常に花を届けるプラットフォーム

 RINさんが運営するオンラインショップ「フラワーサイクルマルシェ」では、花農家さんが丹精こめて育てた花を直接、私たち消費者のもとへ届けています。ここには、市場の定めた「厳しすぎる規格」はありません。十分に高品質な花を、手頃な価格で日常に取り入れることができます。花農家さんにとっても、花の廃棄を減らしながら新たな収益を得ることができます。花を愛するすべての人をつなぎ、お互いが笑顔になれる仕組みです。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

消費者の「ありがとう」が、花農家さんに直接届く。そんな温かさも魅力の1つです。

② 新しい価値を吹き込むアップサイクル

 RINさんの最大の特長は、ロスフラワーに新しい物語を添えて価値を高める「アップサイクル」にあります。一般消費者向けのドライフラワーをはじめ、ホテルや商業施設、企業向けの大規模な空間演出も手がけています。

例えば、大丸東京店では、2,000本以上のロスフラワーを壁一面に飾るとともに、農家さんから届いた花がドライフラワーに生まれ変わるストーリーを映像でプロモーションされました。このようなロスフラワーを用いたブランディングを企画・提案・支援しながら、「規格外であっても美しい」というメッセージを、私たち消費者に届けています。

フラワーサイクリストの育成

 RINさんは、女性の新しい働き方もデザインされています。運営するスクール「フラワーキャリアアカデミー」では、廃棄される花を救う専門職「フラワーサイクリスト」の育成に力を注いでいます。「好きなお花を本気で仕事にする人生を味わってほしい」という想いから、花の知識を学ぶだけでなく、「きちんとお金になる仕事の仕方」まで学べるのが魅力です。既存の雇用形態に馴染めなかった方や、育児・ライフスタイルの変化で自分らしい働き方を求める方に、好きな花を仕事にしながら社会と繋がれる機会を提供しています。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

卒業生は全国で400名以上。その多くが個人事業主として自立されています。

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 生産性やタイムパフォーマンスが信奉される現代社会では、「花を愛すること」を非効率に感じるかもしれません。でもそれは、時間に追われる日々の中で、花を愛する心の余裕を失っているサインなのかもしれません。本当の幸せとは、お金を稼ぐことでも、派手な暮らしをすることでも、誰かに認めてもらうことでもありません。朝に淹れたコーヒーの香り、家族と囲む食卓、外に出たときに感じる季節の風、帰り道にふと目にした可憐な花。そういった生活の中でひっそりと咲く「小さな幸せ」に気づくことこそが、私たちの心を豊かなものにしてくれます。
誰かの決めた規格から外れても、役目を終えた後でも、カタチを変えて輝き続ける花たち。RINさんの装飾を見ていると、「自分だけの輝きを見つけられる」「何度でもやり直すことができる」というメッセージを届けてくれているように感じます。何気ない日常を、ほんの少し違う角度から見つめてみてください。この記事を読んでくださった皆様なら、そこに小さな幸せを見つけられるはずです。

自分に優しく、人に優しく。 自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。 それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。また、和のテイストが大好きです。
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