“その人らしい最期”を。介護と医療をつなぐソーシャルスタートアップ「flagMe(フラグミー)」

人生の幕を閉じるとき「ああ、いい人生だった」と思える人は、果たしてどれほどいるのでしょうか?誰もが、住み慣れた場所で、大切な人たちに見守られながら穏やかに最期を迎えたいと願っています。しかし現実は、その理想とはほど遠いところにあります。高齢多死社会に移りつつある日本では、望まぬ場所で、望まぬカタチで最期を迎える“看取り難民”が増え続けています。2030年には、年間47万人以上がこの当事者になるとも言われています。
そこで今回は、“人生の最期“というセンシティブなテーマに正面から向き合い、寄り添いながら、日本が抱える“看取り難民“の課題解決に挑むソーシャルスタートアップ「flagMe」さんについてお話ししたいと思います。その人がその人らしく、「尊厳と満足」を持ったまま旅立てるように。そして、大切な人を見送る家族に後悔ではなく、「これで良かった」という静かな安心を残せるように。この記事を読んでくださった皆様が、その一歩となる人生会議(ACP)に興味を持って頂けたら嬉しいです。

大切な人たちの最期に寄り添うために、日本が抱える“看取り難民”という大きな課題を解決するために、2023年に生まれた福岡発のソーシャルスタートアップ企業です。長生きを心から喜べる世の中をつくりたい —その想いから、介護施設向けの人生会議(ACP)と医療支援を組み合わせたサポートを提供しています。
これまでにありそうでなかった介護と医療が途切れることなく連携した体制づくりを、人生の最期に「そなえる安心」と「ゆだねられる安心」を福岡から全国へと広げています。

福岡市の成長支援事業への選出やFVMマンスリーアワード受賞など、2023年6月のスタートから徐々に評価を集めています。

2. 日本で増え続ける“看取り難民“
看取り難民とは、”望まぬ場所で、望まないカタチで人生の最期を迎える人たち“のこと。現在の日本は、国民の約3人に1人が65歳以上という超高齢化社会です。そして、その先にある「高齢多死社会」へと移りつつあります。2030年には年間47万人以上もの看取り難民が発生すると言われています。これは単なる統計上の数字ではありません。その中には、もしかしたら皆様の家族が含まれるかもしれないのです。
2-1. 死を遅らせるだけの延命 -発達しすぎた医療の弊害
介護施設で暮らす高齢者の約9割が、「住み慣れた場所で、穏やかに最期を迎えたい」と願っています。しかし、その願いが叶うのはごくわずか。現実には、施設から病院へ救急搬送され、本人の意思とは無関係に、延命治療を受けながら亡くなるケースが後を絶ちません。

「延命治療」は壮絶なものです。心肺停止時に行われる心臓マッサージは、命を繋ぐかわりに、老いた肋骨がバキバキに折られます。無機質な人工呼吸器や無数のチューブに繋がれた姿から“その人らしさ”を感じることはできません。意思疎通もできず、人としての尊厳を無視して、ただ死を遅らせるだけの延命… 多くの場合、その判断は当人ではなく、その家族や医師によって行われます。医療としては正しい。けれど、それは本当にその人が望んだことなのでしょうか?
参考:著書「私たちの終わり方: 延命治療と尊厳死のはざまで」-真部 昌子 (著)
2-2. 介護現場の限界 -善意だけでは救えない現実
高齢者が増え続ける日本では、自宅と病院に次ぐ「第3の看取りの場」として、介護施設の担う役割がますます大きくなっています。しかし、介護現場は「構造的な課題」を抱えており、それが入居者さんの“望まぬ延命”を引き起こしています。それは、夜間における介護と医療の「分断」です。

入居者さんが“住み慣れた施設での最期“を望んでいたとしても、医師や看護師が不在の夜に、容体が急変すれば、介護スタッフさんは必ず救急車を呼びます。もし呼ばなければ、その家族から「何もしなかった」と非難されるかもしれないからです。その重圧と恐怖が、反射的に救急搬送を選ばせてしまい、結果として、入居者さんを“望まぬ延命“へと、”病院での壮絶な最期”へと送り出してしまうのです。これは、介護現場の責任ではありません。問題は、本人の意向が十分に共有されていなかったことにあります。
参考:厚生労働省「介護現場における看取りの対応に係る調査研究」
2-3.「死」を忌避する日本文化
日本には、死を語ることを「縁起が悪い」として遠ざける文化が、いまも根強く残っています。けれど、その沈黙の代償を払うのは、決して本人だけではありません。救急医療の現場で突然、命の決断を迫られる家族 —正解のない問いと向き合いながら、その選択の重みを背負い続けることになるのです。
……元気なうちに、もっと話し合っておけばよかった。

現場で響く後悔の声。それを少しでも減らすために、厚生労働省は2018年から「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」の普及を進めています。もしもの時に備え、自分の価値観や死生観を信頼できる人たちと共有する。最期まで自分らしくあるための対話です。ところが、一般の認知度はわずか5.9%、医療・介護従事者でさえ半数以上がその重要性を知らずにいるのが現状です(2022年度時点)。

参考:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査(令和5年度)」
3.「flagMe」の取り組み
人生の最期まで、自分らしく生きたい ―誰もがその願いを叶えられるように、flagMe(フラグミー)さんは、人生会議(ACP)サポートと医療支援を同時に提供し、介護と医療が連携して「看取りを支える仕組み」を福岡から九州へ、そして全国へと広げています。


入居者さんと家族の方だけでなく、それを支えてくれている介護スタッフさんにも“安心“を届けています。
① 人生会議(ACP)サポート -想いを可視化する
高齢者の急増により、介護施設はどこも慢性的な人手不足…入居者さんの「人生の最期」について話し合う時間の余裕も、心の余裕もありません。そこで、flagMeさんは、介護施設に特化したACPサポートを提供しています。現場の実情を深く理解した専門チームが、忙しい介護スタッフさんに代わり、入居者さん1人ひとりと丁寧に向き合います。「どんな最期を迎えたいか」という重たい問いではなく、その人が大切にしてきた価値観や人生観を紐解き、「最期までどう生きたいか」というポジティブな対話を行います。

このときの様子や内容は、レポートやデジタルの形で可視化され、家族や施設側にも共有されます。これにより、入居者さんの望む個別ケアが実現し、日常生活の満足度アップにつながっています。そして、意思疎通ができなくなった「もしものとき」、この想いの記録が“心の声を届ける代弁者”になってくれます。それは、“その人らしい最期“を叶えてくれるだけでなく、重大な決断を迫られる家族の”重荷“をスッと軽くしてくれます。
② 医療オンコールサポート -不安を安心に変える
flagMeさんは、介護現場の不安を解消するための医療サポートも同時に提供しています。高齢者医療に精通した看護師が、24時間365日体制で遠隔からアドバイスを行う仕組みです。介護スタッフさんが「救急車を呼ぶべきかどうか」迷いやすい夜間であっても、コミュニケーション研修を積んだ看護師さんが医学的見地と入居者さんの意向(ACP)に基づいた的確な助言をしてくれます。導入した施設では、不本意な救急搬送が減り、住み慣れた場所での穏やかな看取りが倍増したという実績もあります。


このサポートのお陰で、現場のスタッフさんも入居者さんの家族も安心して「お別れ」を選ぶことができるんだ。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
葬儀や法事、お盆など。日本には古くから、亡くなった人に思いを馳せ、感謝を伝える美しい文化があります。故人との対話。そこには悲しさよりも、どこか心温まるものを感じます。でも、どうせなら「生きているうち」に話し合っておく方がずっといい。人生会議は、終わり方の準備ではなく、“自分らしい生き方”を言葉にする。そうすることで、私たちは“望む最期”を迎えることができます。見送ってくれる家族に、答えのない後悔ではなく、温かな“優しさ”を残すことができます。
「flagMe(フラグミー)」さんは、介護の現場に寄り添い、入居者さんの人生と向き合い、その家族の心をも支えています。福岡から始まった「希望のフラグ」が全国に広がり、誰もが尊厳と満足を持ったまま人生を全うできる社会に、長生きを心から喜べる世の中になってほしいと切に願います。もしも今、皆様に大切な人と穏やかに話せる時間があるのなら、少しだけ勇気を出して、小さな人生会議を始めてみてください。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。


