あなたも誰かのサンタクロースに。全ての子どもたちに“特別な思い出”を届ける「チャリティーサンタ」

皆様、こんにちは。
お祝い事の多い日本でも、クリスマスや誕生日は、誰もが胸を弾まる一大イベント!子どもにとっては「大事にされている」と実感できる特別な日であり、親御さんにとっては「子どもへの愛情」をカタチできる貴重な日もあります。しかし、皆がこうした特別な日を楽しめるわけではありません。経済的な厳しさから、大切な思い出をつくれず、辛く寂しい思いをしている親子もいます。その数、日本国内だけでも約200万人はいると推定されています。中には、子どもへのプレゼントやケーキだけでなく、お祝い自体を諦めてしまっている家庭もあります…
そこで今回は、クリスマスを起点としながら、年間を通して子どもたちの「思い出づくり」を支援されているNPO法人「チャリティーサンタ」さんについてお話ししたいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、大人から子どもへと思いやりが循環する社会のために、少しでも力になりたいと思って頂けたら嬉しいです。

“あなたも誰かのサンタクロース”を合言葉に、子どもたちのために、2008年から国内外で活動されている認定NPO法人です。全国の書店と連携した「ブックサンタ」や、洋菓子店と連携した「シェアケーキ」といった様々な支援プロジェクトを展開し、子どもたちが笑顔になれる体験を届けています。
また、全国33都道府県にある44の支部を中心に、自治体や専門家、民間企業、他のNPO団体と連携・協働し、単発で終わらない寄り添う仕組みづくりも行っています。もちろん、クリスマスシーズンだけでなく、年間を通して子どもたちの思い出づくりを支援しています。

プロジェクトの1つである「ブックサンタ」は、2024年グッドデザイン賞ベスト100への選出、Golden Pin Design Awardの受賞など、国際的にも高く評価されています。

2. 日本で見えにくい 子どもの貧困と体験格差
平和で豊かに見える日本でも「貧困」は存在しています。それもけっして少なくない割合で… その貧困が原因で、子どもたちの間で体験格差(思い出格差)が広がっています。
2-1. 日本における子どもの貧困
厚生労働省の調査結果によれば、2024年度における日本の子ども(17歳以下)の相対的貧困率は約11.5%― つまりは、約9人に1人の子どもが、一般的な世帯収入(等価可処分所得の中央値)の半分にも満たない経済状況の中で暮らしていることが示されました。経済的に困窮した家庭では、十分な食べ物が買えなかったり、衣服が買えなかったりといった切実な生活苦を抱えています。特に、社会的に不利な立場に置かれやすいひとり親世帯の家庭では深刻化しやすく、相対的貧困率は44.5%と極めて高い傾向にあります。

こうした貧困の現状は、日本では見えにくいと言われています。それは、貧困であるという自覚がなかったり、自覚があっても周囲の目を気にして行政の支援を求めなかったり、身近に頼れる親戚がいないといったケースが多いためです。
参考:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
参考:内閣府-政府広報オンライン「“こどもの貧困”は社会全体の問題」
2-2. 貧困から生まれる体験格差
キャンプや登山などの自然体験、音楽やスポーツ観戦などの文化体験、そして、習い事や読書といった学習体験は、子どもの健やかな成長を促します。こうした学校だけでは味わえない体験を通して、子どもは様々なことに興味を持ち、社会性や感受性を育み、学びへの意欲を高めます。子ども時代の体験が、将来の選択肢を広げるといっても過言ではありません。

しかし、生活苦を抱える家庭では、子どもに学校外での体験をさせてあげる余裕はありません。ひとり親世帯であれば、お金だけでなく、親子で過ごせる時間もそう多くはありません。誕生日やクリスマスといった最も大切な家族イベントでも、困窮家庭の3割が子どもへのプレゼントを諦め、 2割がケーキを諦めているという調査結果もあります。
こうした子どもたちも、日本なら9年間の義務教育を受けることはできます。しかし、体験機会に恵まれなかった子どもは、恵まれた子どもと比べて、学習意欲や課題解決能力が低い傾向にあります。子ども時代の体験不足が、成長過程での学習能力に影響を及ぼし、大人になってからの社会参加を難しくさせているのです。
出典:公益社団法人Chance for Children「子どもの体験格差 実態調査報告書」

3.「チャリティーサンタ」の取り組み
チャリティーサンタさんは、子どものために大人が手を取り合い、子どもの貧困や体験格差の解決を目指しているNPO法人です。クリスマスを起点としながら、年間を通して子どもたちの「思い出づくり」を支援しています。ここでは、その支援プロジェクトの中から代表的な3つを紹介させて頂きます。

参考:認定NPO法人チャリティーサンタ「サンタ新聞|20024年度報告書」

支部がなくサンタ活動が難しいエリアにも「サンタクロースからの手紙」などを通して、子どもたちに特別な思い出を届けています。
➀ブックサンタ — 誰でも書店で、本を贈るサンタになれる
本は、世界を広げる冒険の地図であり、未来を切り拓く知恵の宝庫でもあります。また、子どもたちにとっては、ときに心を休める避難場所にもなります。特に、本に触れる機会に恵まれない子どもにとって、「自分のために贈られた1冊」は、計り知れない価値を持ちます。

ブックサンタは、そんな「本を必要とする子ども」と「本を贈りたい大人」をつなぐ仕組みです。寄付者は、賛同する全国の書店で「ブックサンタ」と伝えて本を購入するだけで参加できます。1冊数百円の文庫本から寄付できる手軽さと、匿名で参加できる心理的ハードルの低さが特徴です。毎日が忙しい方でも、困難な境遇にある子どもたちに「想い」を乗せた本をプレゼントできる仕組みとなっています。
ブックサンタ2024では1,868店舗の書店さんと共に、83,516冊もの本が子どもたちに届けられました。2017年のスタートから数えると、寄付された本の数は累計 約40万冊に昇ります。口コミやSNSで賛同する企業団体や著名人も年々増えており、共感の輪が広がりを見せています。


お祝いするのが難しい被災地にも出張訪問し、子どもたちに想いの乗った本を届けているよ。
②シェアケーキ —誕生日を諦めてしまった子どもたちへ

子どもにとって誕生日は、自分が主役になれる特別な日。クリスマスと並び、大切にされていることを実感できる年に一度のイベントです。シェアケーキは、そんな誕生日のお祝いを諦めてしまった親子に「誕生日のホールケーキ」を届ける取り組みです。全国のNPO団体と洋菓子店さんと連携し、生活に困窮している家庭にお祝いの気持ちと温かい思い出をプレゼントしています。また、幅広い層に関心を持ってもらえるように、2024年度からは、著名人の方々と協力した「ケーキのWA」というプロモーション活動も行っています。
③ルドルフ基金 ―無償の思い出を届ける

ルドルフ基金は、様々な事情(経済困窮、被災、病気、障害など)で、相対的な体験不足にある子どもたちに、特別な思い出を届けるための基金です。ここで募った資金・寄付がチャリティーサンタさんの活動を支え、無償でのサンタ訪問やシェアケーキ、キッズツアーやカリキュラムの提供などに活かされています。

子どもたちに笑顔を届けるのは、サンタクロースだけではありません。赤鼻のトナカイ(ルドルフ)のように、その活動を応援してくださる人たちがいるからこそ続けられるのです。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
お中元やお歳暮、ご祝儀、お供え物、お土産など、日本には昔から“心”を“カタチ”にして届ける贈り物文化があります。日本における誕生日やクリスマスの文化もまた、そうした流れを汲んで育まれてきました。プレゼントを心待ちにする子どもたちと、子どもの夢を守ろうとする大人たちの手によって、大切に大切に。しかし、世の中には、経済的困窮などの理由から特別な日を楽しめない、それどころか苦痛にさえ感じている人たちもいます。
貧困や格差といった大きな社会課題は、一夜にして解決できるものではありません。しかし、たった一夜の特別な体験が、子どもたちのその後の人生を変えることもあります。一冊の本を贈るという小さな行為でさえ、子どもたちの興味をくすぐり、学びの入口や居場所を生み、思い出となって心に残ります。それが希望となって、子どもから大人へ、大人から子どもへと、世代を越えて受け継がれていくのです。子どもの頃に感じたあのワクワクを、今度は大人になった私たちが叶える番です。まずは小さな一歩から。子どもたちの幸せを思い浮かべ、書店で一冊の本を手に取るところから始めてみてください。そうすれば、あなたも誰かのチャリティーサンタです。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

