人と社会

「patagonia」は、故郷である地球を救うためにビジネスを営む稀有なアパレルブランドです。

otobokezizou

 皆様、こんにちは。

 衣食住は、人が社会で生活する上で必要な基礎です。中でも、「衣」服を着るのは、私たち人間だけです。衣服には、身体を保護し、体温調節や衛生を補助することで、快適な状態を保つ役割があります。しかし、それだけではありません。私たちは、自己表現のために、様々なメッセージを伝える手段としても衣服を着ます。衣服には、そんな社会的な機能もあるのです。

しかし、現代のアパレル産業は、大量生産・大量消費・大量廃棄が前提となっており、石油産業に次ぐ世界第2の汚染産業とされています。毎年、必要以上に多くの衣服が作られ、一度も袖を通すことなく捨てられる服が、(文字通り)山のように出ています。日本だけ見ても、年間約50万トンもの衣料品が廃棄されています。その生産のため用いられる資源やエネルギー、そして、廃棄に伴う環境負荷はあまりにも大きい… そんな中、環境保護などの観点から、自分が着心地が良いと感じるこだわりの一着を長く大切に着る「スロー・ファッション」が注目を集めています。今回は、その1つとして、社会活動によって起こる環境問題に対して独自の理念を持って取り組んでいるアウトドアブランド「patagonia(パタゴニア)」について、お話ししたいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、スロー・ファッションに、エシカルなライフスタイルに少しでも関心を持って頂けたら嬉しいです。

 パタゴニアは、登山家でもあるイヴォン・シュイナードさんが1957年に創業された企業です。そのブランド「patagonia」は、実用性やデザイン性の高いアウトドア製品を提供し続ける人気のアパレルであるだけでなく、世界の環境・社会問題への警鐘を鳴らし、その責任を果たすこと真剣に取り組んでいる珍しいブランドです。その積極的な取り組みにより、登山・アウトドアを楽しむ人たち以外にも永らく愛されています。

=ミッション=

私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。

おとぼけ地蔵
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パタゴニアさんは、2015年に採択された持続可能な開発目標SDGsの30年以上も前から、開発途上国における労働環境の改善や環境負荷低減への取り組みを続けています。

参考:patagonia「イヴォンの手紙」

2. スロー・ファッションというライフスタイル

2-1. 現代のアパレル産業の闇

 そもそも衣服の生産には多くの資源とエネルギーが費やされています。原料1つとっても、化学繊維の生成には多くの石油が使われますし、コットンなどの植物素材の栽培にも大量の農薬や肥料が使用されています。また、鮮やかな色を生み出す染料は排水として流され、周囲の生態系を狂わせています。素材や商品の流通時にもたくさんのCO2が排出されており、地球温暖化を加速させています。もちろん、その廃棄についても同様です。残念ながら、新しい衣料品にリサイクルされるのはほんの一部であり、そのほとんどは埋め立て地に送られるか、焼却処分されています。そして、大量生産・大量消費・大量廃棄が前提となっている現代のアパレル産業では、これらが与える環境負荷がとてつもなく大きくなっているのです。

もう1つの問題は「人権を無視した労働」です。ファスト・ファッションに代表される「そこそこ安価で質の良い衣服」の多くは、人件費の安いカンボジアやバングラデシュ、インドなどで生産されています。それらは、途上国に住まう人たちに雇用をもたらしましたが、その多くは最低賃金の給料しか与えていません。その上、労働環境は劣悪であり、1日14~16時間の長時間労働を週7日強いられているケースも珍しくありません。たとえ過労によって体調を崩したとしても、病院に行くお金もなく、栄養のある食事をとることもできません。アパレルの世界では、コストを抑えるための労働搾取が常態化しており、1着の服を作るために、大勢の労働者さんが世界で最も低い賃金で働かされているのです。

おとぼけ地蔵
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2013年4月にバングラディッシュで起きた『ラナ・プラザの悲劇』、そして、2015年公開の映画『The True Cost ファスト・ファッション 真の代償』により、開発途上国で行われている労働搾取の実態が世界に知られることになりました。

参考:環境省「ファッションと環境」

参考:rootus「悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは」

2-2. スロー・ファッションとは?

 スロー・ファッションとは、人権や環境、動物に配慮して作られたファッションアイテム及び、その考えに基づいたライフスタイルのことです。環境に優しい植物性素材やリサイクル素材から作られているだけでなく、1つのアイテムを長く愛用してもらえるような工夫が凝らされているのが特徴です。また、その生産過程においても、水・電気の使用量やCO2排出をできるだけ抑えたり、職人さんや労働者さんたちに正当な賃金を支払い、適切な労働環境・条件下で働けるように配慮するなどの取り組みが行われています。そうやって丁寧に作られたアイテムを、私たち消費者が真心を込めて長く使い続けることで、衣服の消費サイクルを緩やかにし、環境への負担を減らしていく。それこそが、スロー・ファッションの醍醐味です。

=スロー・ファッションの様々な形=

  • リサイクル素材やアップサイクル素材で作られた衣服を購入する。
  • 古着を買う。
  • 衣服を捨てずに、メルカリやフリーマーケットなどで売る/ 知人に譲る。
  • サブスクリプションで衣服を借りる。
  • 手持ちの衣服をメンテナンスやリメイクしながら着る。
  • 流行に流されず、経年で楽しめるデザインを選ぶ。
馬三郎
馬三郎

スロー・ファッションの形は、1つだけじゃないんだね。

おとぼけ地蔵
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根底にあるのは、「いま持っている1着を大切に、できるだけ長く使うこと」「資源を無駄にせず、すでにあるものを循環させること」です。

3.「patagonia」の4つの魅力!

 登山家でもあるイヴォン・シュイナードさんが創業されたこともあり、patagoniaブランドは機能性や耐久性が高く、かつ着心地の良いアウトドアウェアとして、キャンプや登山などのアクティビティ好きな人たちに支持されています。また、そのオシャレなデザイン性も人気があり、カジュアルな普段着として愛用する人も多くいます。何より、そのビジネスを環境保護や社会的倫理に配慮しながら行っているからこそ、少々値段が高くとも、たくさんのファンの心を掴んでいるのです。

参考:patagonia「フットプリント」

Point 1: 環境・社会的責任への弛まぬ努力

 パタゴニアさんは、ファッションアイテムの生産において、環境負荷の低い素材を採用しています。例えば、原料であるバージン・コットンには、サプライヤーと協力してオーガニック農法で栽培されたものだけを使用しています。機能性の高いナイロンやポリエステルの約90%はリサイクルされたものを使い、石油依存を削減しています。patagoniaブランドの既に87%が、このような再生可能 or リサイクル素材で作られていますが、2025年までにこれを100%にするべく更なる取り組みが行われています。

また、パタゴニアさんは、農場から生産工場、店舗に至るサプライチェーン全体において、労働者さんとそのコミュニティに対する社会的責任を自らに課しています。業界最高の職場環境を整え、労働に見合った適切な報酬を与えています。環境への悪影響を最小化するだけではなく、ビジネスに関わる全ての人たちの人生に恩恵をもたらすために邁進しています

馬三郎
馬三郎

オーガニック農法でコットンを育てながらもまだ認証を受けていない農家さんや、リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイドという新しい農法でコットンを育てる農家さんたちの支援も行ってるよ。

Point 2: 長く使い続けて頂くためのアフターサービス

パタゴニアさんはリペアのスペシャリスト部門を設けており、アフターサービスが他のアパレルブランドよりも充実しています。また、意外と知らない衣服のお手入れや適切な洗濯方法、また使えるようするための修理方法など、1つの製品を長く使い続けるコツ・ノウハウをホームページやイベントでわかりやすく伝えています。

加えて、不要になった自社製品の買い取りと中古ウェアの販売も行っています。そこでは、寿命の終わりに送り返されてきた中古ウェアを組み合わせ、修理を施し、リメイクした「Recraftedリクラフテッド」製品も販売されています

Point 3: 地球税「1% for the Planet」

 1985年以来、パタゴニアさんは、自らに地球税「1% for the Planet」を課しており、世界中で空気、土地、水を守るために活動している環境非営利団体さんたちに、時間と労力、そして、毎年売上の1%以上の寄付を行っています。

更に、パタゴニア日本支社では「環境助成金プログラム」も実施しており、草の根的に環境保護活動を行っている団体さんを支援しています。

Point 4: 「地球が唯一の株主」とする組織

 パタゴニアさんは、株式を公開しておりません。公開すれば、株主(投資家)からの過剰なプレッシャーに晒され、短期的な利益を得るために長期的な目標を犠牲にしなければならなくなってしまうリスクがあるためです。故に、パタゴニアさんは、議決権付株式100%を会社の価値観を守るためだけに設定された組織Patagonia Purpose Trustに譲渡し、私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを貫く仕組みを作っています。

参考:Zebras and Company 「地球を唯一の株主に?パタゴニア株式譲渡の仕組みとその意図とは?

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 衣服は、社会で生きる私たちにとって欠かせないものです。とりわけ、現代では機能性よりも社会的な意味合いが大きく、自己表現の手段にもなっています。しかし、その自己表現は新しい服でなくともできます。一時の幸せを感じるためにだけに、流行に乗る必要も、目新しいファッションに身を包む必要もありません。人は、持っているものが少なくとも、幸せに生きていくことができます。消費社会で生きる私たちが地球のためにできることは、1つのモノを長く使い続けて消費そのものを減らすことです。人権や環境、動物に配慮しながらファッションを楽しむスロー・ファッションは、その1つの形であると思います。お気に入りの服と共に歳を重ねる…そんなライフスタイルが広がり、エシカルな生き方に賛同してくれる人が、1人でも増えてくれることを祈っております。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
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