「なんとかしたい」を大きな力に変える。「かものはしプロジェクト」は、子どもを取り巻く不条理をなくすために活動を続けられています。

皆様、こんにちは。
平和と安全を享受できる日本で暮らしていると、家族や友人たちとの会話で、深刻な社会課題がテーマになることはなかなかありません。メディアで大々的に取り上げられることもそう多くはありません。しかし、世界には、子どもの人身売買や児童買春、虐待といった悲しい現実があります。今なお4,960 万人もの人たちが「現代の奴隷」としての被害に遭っており、その3分の1は子どもです。こういった不条理は、決して遠い国だけの話ではありません。私たちの住む日本でも、外からは見えにくい暴力や搾取の犠牲になっている子どもたちがいるのです。
そこで今回は、子どもたちが安心して暮らせる社会のために、20年間以上にも渡り人道支援活動をされているNPO法人「かものはしプロジェクト」さんについてお話ししたいと思います。記事を読んでくださった皆様の心の中にも、子どもたちの未来のために「なんとかしたい」という気持ちが宿ってくれることを願っています。

2002年の設立から、人身売買や児童買春などの「子どもたちが売られてしまう問題」や児童虐待をなくすために活動されている認定NPO法人です。対処療法的な支援だけでなく、人身売買ビジネスそのものが成り立たないように、根本的な社会の仕組みを変える(=法律や制度を整える)取り組みにも注力されています。
現在は、インドと日本での活動に注力し、子どもたちが安全に暮らせる社会を目指して様々な人道支援プロジェクトを実施しています。
=ミッション=
だれもが、尊厳を大切にし、大切にされている世界を育む
参考:認定NPO法人 かものはしプロジェクト「ホームページ」

2. 子どもを取り巻く不条理
2-1. 現代に残る奴隷制、人身売買
国連の国際移住機関IOMの報告には、世界で4,960 万人もの人たちが「現代の奴隷」として被害に遭っていること、その3分の1が子どもであることが示されています。売春や強制結婚、劣悪な環境での強制労働、臓器摘出など、本人が拒否することも逃げることもできない状況で、これだけ多くの人たちが搾取され続けているのです。人身売買は水面下で行われることが多いため、この数字は氷山の一角に過ぎません。実際にはもっと多くの被害者がいるとされています。

参考:国際移住機関IOM「Global Estimates of Modern Slavery(2022)」
2-2. インドの人身売買問題

2024年現在、世界第5位にまで経済成長を遂げたインドですが、今も約800万人の人たちが「現代の奴隷」として様々な被害を受けています。特に、社会的立場の弱い女性や子どもの被害が顕著です。
インドで人身売買が解決されない理由の1つは、トラフィッカー(誘拐して売春宿に売り飛ばす人)が「野放し」になっていることです。国土の広いインドは連邦制国家のため、各州が強い権限を持っています。しかし、州同士の連携が難しいという弱点があります。そのため、州をまたぐ長いルートで人身売買が行われた場合、政府・警察がうまく対応できず、捜査が適切に行われないケースが多いのです。また、裁判プロセスも長期化しやすいため、捕まえたトラフィッカーが適切に処罰されることも、被害者が補償を受け取ることも難しい状況にあります。
更に、人身売買組織の構造が解決をより難しくさせています。人身売買に加担するトラフィッカーは、「村から被害者を調たちするグループ」「中継地点で被害者を譲り受け売春宿まで連れていくグループ」「売春宿で性的サービスを強要・虐待を行うグループ」に分かれており、捕まるのは末端である「売春宿で性的サービスを強要・虐待を行うグループ」がほとんどです。他の多くのトラフィッカーが裁かれることはまずありません。そのため、被害者たちが運よく売春宿から救助され家族の元へ帰ったとしても、村のトラフィッカーから嫌がらせや脅迫などの報復を受け、精神的に追い詰められていくケースも少なくありません。
参考:Spaceship Earth「人身売買(人身取引)が多い国はどこ?」

悲しいことに、子どもが売られるケースの半分以上で家族や友人の関与があるんだ… 人と人との感情的つながりの欠如が貧困と結びついたときに、人身売買が起こるのかもしれない。
2-3. 日本の児童虐待問題
子どもを取り巻く不条理は、この日本にも存在しています。社会福祉が充実している日本でさえ、外からは見えにくい暴力や搾取の犠牲になっている子どもや若者がいます。家が安全な場所でないために、冬の公園で凍えながら過ごしたり、ネットで助けを求め泊めてくれた人から性行為を強要されるケースなど…このような児童虐待の相談対応件数は年々増え続けており、2022年度には21万件を超えました。


深刻な児童虐待に至ってしまう家庭では、出産以前から何らかの問題があった場合がほとんどです。経済的に困窮していたり、精神的に不安定であったり、予期せぬ妊娠だったり、DVを受けていたり…そういった複雑な事情を抱えていたにも関わらず、頼れる家族や相談できる相手がおらず、「孤立していた」という特徴がありました。誰かと繋がり、誰かと寄り添えていたら、違った未来があったかもしれません。
親からの虐待や離別を経験し、養護施設や里親のもとで育った子どもの多くは、18歳で高校を卒業するタイミングで、ひとり立ちすることになります。しかし、頼れる親のいない若者たちにとって、それは、経済的な後ろ盾や安心感のない自立となります。無条件に頼れる人がいないという孤独や精神面での課題を抱えながら、18歳という若さで自らの人生を切り拓いていかなくてはなりません。そのため、社会的な繋がりが途切れ、再び困難な状況に陥ってしまう若者も少なくはありません。

3.「かものはしプロジェクト」の取り組み
かものはしプロジェクトさんは、子どもの人身売買や児童虐待、貧困といった理不尽な社会課題を根本から解決すべく、事業内容をアップデートしながら20年間以上に渡り活動を続けています。

参考:認定NPO法人 かものはしプロジェクト「年次報告書(2023-2024)」
In インド
インドでは、「商業的性的搾取及び労働搾取を目的とした人身売買」をなくすために、次の2つの事業を軸に問題解決に取り組まれています。
2013年からスタートしたタフティーシュ事業では、「人身売買ビジネスが成り立たない社会」の仕組みを作ることを目指して、現地のNGO団体や弁護士グループと連携し、人身売買の被害にあった女性たちが権利と正義を取り戻すための支援をしています。その取り組みは、刑事司法や福祉制度の強化にまで広がっています。
=事業方針=
・人身売買に加担するトラフィッカーが適切に捜査され、裁判で適切に裁かれること
・人身売買の被害に対して、国から適切な補償を受け取ること
・人身売買の被害から適切に回復できるよう、州・県からの支援を獲得すること
・人身売買そのものを抑止できる法律や政策に関与すること
被害者補償は、人身売買の被害を生き抜いたサバイバーさんの生活再建に繋がるだけでなく、再被害のリスク低減や家庭内での地位向上、お子さんの教育資金の確保など、「貧困の連鎖」に巻き込まれないための大きな助けになります。2023年には、124人のサバイバーさんが国に被害者補償を申請し、うち55人に被害者補償が認められました。
2018年から立ち上がったリーダーシップネクスト事業は、人身売買の被害を生き抜いたサバイバーさんが自分の人生を取り戻し、社会を変えるリーダーへと成長することに寄り添う支援プログラムです。被害者からサバイバーへ、サバイバーからリーダーへと再生・成長する姿は、「人身売買の被害にあった人=ただのかわいそうな人」というイメージを払拭し、社会に意味のある還元ができる存在であることを、世界に伝えることに繋がります。現在は、15のサバイバーグループで、486名のサバイバーリーダーを含めた総勢1,091人のサバイバーさんたちが活動されています(2024年7月時点)。


かものはしプロジェクトさんの事業では、常に「サバイバーさんたちの声」が中心に置かれています。
In 日本
かものはしプロジェクトさんの日本での活動は、2019年からスタートしました。子どもが虐待されない社会、虐待を受けた子どもたちが回復できる社会をつくるために、次の2つの事業を通して活動されています。
妊娠期から社会との繋がりを育むことが、誰かに頼っても良いという心の余裕を生み、児童虐待の予防になります。かものはしプロジェクトさんは、千葉県松戸市のNPO法人「さんま」さんと共に、孤立しがちな妊産婦さんが安心して過ごせて、誰かとの繋がりをつくれる居場所「ふたやすみ」を運営しています。ソーシャルワーカーや助産師、保育士など、様々な専門性を持ったスタッフさんが中心となり、宿泊・居場所・訪問の3つを通して、困りごとを抱える妊産婦さんとそのご家庭をサポートしています。

また、彼女たちが支援の網目からこぼれ落ちることがないよう、支援団体や行政との連携を促す活動も行っています。将来的には、ここでの経験を踏まえた発信や政策提言(アドボカシー活動)を通じて、妊娠・出産・子育てをする人たちが孤立することのない「地域の繋がり」を全国に増やしていく方針です。
この事業では、児童養護施設などを出た若者たちが、安心して巣立つことができる社会の仕組みづくりに取り組んでいます。親を頼ることができない若者たちへの就労支援や心理カウンセリング、交流イベントを提供し、彼ら彼女らの社会的な孤立を防ぎながら自立できるよう長期的にサポートしています。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
かものはしプロジェクトさんが活動を開始した2002年当時、カンボジアでは、10歳にも満たない少女がわずかなポケットマネーで売買されるほどに人身売買が横行していました。しかし、NGO団体や国際機関、政府による長年の取り組みによって、人身売買の被害は激減しました。社会課題はとても複雑で、何か1つ行動を起こしたとしてもすぐに状況が改善するわけではありません。しかし、行動する人が増えれば、その分だけ社会は変わります。カンボジアの例は、それを示してくれたように思います。
たとえ微力であったとしても、私たちにもできることはたくさんあります。まずは、自分と家族を大切にすること。そして、各々ができる範囲で、他の誰かのために行動すること、行動し続けること。認定NPO法人「かものはしプロジェクト」さんは、子どもも大人も、人としての尊厳を持って生きていける社会を目指し、現在も多方面で活動を続けられています。「なんとかしたい」という気持ちが皆様の心にも芽生えたなら、一度、プロジェクトへの参加や支援を検討してみてください。その一歩が、子どもたちの未来を救う一助となるはずです。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。
