食べすぎの時代だからこそ、食べるをへらす。心と身体を整える健康法「一日一食」

人生100年時代と言われて久しい今日この頃、私たちの健康への関心はますます高まっています。しかし、現代は飽食の時代でもあります。世界保健機関(WHO)によれば、世界では10億人以上が肥満状態にあるとされており、その数は飢餓に苦しむ人々を上回っています。
日本でも、肥満傾向のある人の割合は男性で3割以上、女性でも2割を超えており、大きな変化は見られていません。肥満は、糖尿病や高血圧、脂質異常症など、多くの生活習慣病とも深く関わっています。好きなものを自由に食べられることは、本来とても幸せなことです。けれど、その豊かさが、かえって私たちの身体を疲れさせている側面もあります。
そこで今回は、現代の食生活に一石を投じる「食べない食事法」について、お話ししたいと思います。間欠的断食としても研究が進められており、その健康効果が注目されています。合う・合わないには個人差がありますが、健康的な食生活に興味のある方は、選択肢の1つとして検討してみてください。
私たちが当たり前だと思っている「一日三食」。実は、少し食べすぎです。この食事法では、胃腸を休ませることができないからです。
食事は、食べた瞬間に終わるわけではありません。その後、私たちの体内では、各臓器が懸命に働き、「消化」「吸収」「排泄」という大事なプロセスが行われています。一般的に、胃での消化には3~5時間、小腸での吸収には5~8時間は掛かります。そして、大腸では、小腸で吸収されなかった水分やミネラルを15~20時間かけて吸収し、その残りが便となって排泄されます。

けれど、一日三食では、前の食事が残ったまま、次の食べ物が運ばれてきます。胃腸は休む暇もなく、常に働き続けなくてはなりません。ブラック企業のような労働環境……内臓に負担がかかり、身体が疲弊してしまうのも無理はありません。
2.「食べない食事法」とは?
食べない食事法とは、「食べない時間」を意図的につくる食べ方です。代表的なのは、最後の食事から16時間以上の空腹期間を設ける「16時間断食」です。お金を掛けず、誰でも手軽に、すぐに実践できます。それでいて、メリットは絶大です。


私もこの食事法を実践しており、今では、夕食のみの「一日一食」が習慣になっています。
メリット1. 身体の内側から美しく整う
食べない食事法は、単なるダイエットではありません。私たちの身体に生まれつき備わっている浄化機能を目覚めさせ、身体の内側から美しく整うための「健康法」です。

空腹時間をつくることで、胃腸をしっかり休ませることができます。その結果、「消化」「吸収」「排泄」のサイクルが整い、身体に堆積した老廃物や毒素がうまく排出されるようになります。体内のデトックスがしっかり行われると、細胞の代謝が正常化し、腸内環境も整うため、病原菌や細菌から身を守る免疫機能もアップします。

空腹によって細胞が飢餓状態に陥ると、普段眠っている「長寿遺伝子」のスイッチが入ります。この遺伝子には、細胞の老化の原因になる活性酸素を打ち消したり、DNAを修復したり、細胞をストレスから守ってくれる働きがあります。空腹には、それだけでアンチエイジング効果があり、健康寿命を延ばしてくれる可能性があります。

オートファジーとは、細胞内の古くなったタンパク質を分解・再利用する身体の仕組みのこと。
最後の食事から10時間ほど経過すると、肝臓や筋肉に蓄えられた糖がなくなり、体内の脂肪が燃やされます。そして、食後12~16時間が経過する頃には、更なるエネルギー源を求めて、オートファジーが活性化します。これにより、空腹時のデトックスやアンチエイジングが促進され、より高い健康・美容効果がもたらされるのです。これが「16時間以上の空腹期間」が推奨されている理由の1つです

オートファジーは、その研究の第一人者である大隅教授が、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになりました。
メリット2. 時間に余裕ができる

私たちは一日の中で、多くの時間を食事に費やしています。総務省の調査によれば、一日の中で食事に充てている時間は約96分間。一日三食の場合、一食あたり30分ほど掛けていることになります。つまり、食事の回数を減らせば、その分だけ「食べること」に追われない時間が生まれます。
一日一食にならば、一日1時間を創出することも不可能ではありません。タイムパフォーマンスや時間的価値が重視される現代において、この1時間はとても大きいと言えます。

買い出しや調理、片づけの時間まで含めると、期待以上に自由な時間が増えるかも。
参考:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」
メリット3. 身も心も軽く、パフォーマンスも向上する
消化には多くのエネルギーが使われており、一日のエネルギー消費の約10%に相当するとも言われています。食後に眠くなったり、集中力が落ちてしまうのは自然なことなのです。

私たちの身体は、空腹時にこそ本来のパフォーマンスを発揮できるよう出来ています。人類の祖先は250万年もの間、原始的な狩猟生活を送ってきました。その環境の中で、空腹状態でも活動できるように身体を適応させてきました。
その人類が、農耕により安定した食糧を得られるようになったのは約1万年前。日本で一日三食が普及したのは約300年前であり、人類の長い歴史から見れば、つい最近のことなのです。その短い間に食生活は大きく変わりました。でも、私たちの身体は、狩猟生活をしていた頃のまま変わってはいません。そのギャップが、生活習慣病をはじめとする身体の不調となって現れているのです。

食べない食事法は、脳の「決断疲れ」を減らすことにも繋がります。私たちは一日の中で、無数の“選択と決断”を繰り返しています。今日は何を食べようか、間食しようかな、テイクアウトにしようかな。食事に関する事柄だけでも、一日2,000~3,000回の決断をしているとも言われています。
食事の回数を減らせば、こうした小さな決断も自然と減ります。「一日一食、それ以外は食べない」と決めてしまえば、食事に費やしていた決断力をセーブできます。その分だけ、脳のパフォーマンスを高め、仕事や勉強、やりたい事に集中することができるのです。

「空腹の方が、頭が冴える」と感じる人も多いはず。
メリット4. 食事の「ありがたさ」に気づける
空腹は、最高のスパイスになります。一日中いつでも食べられる環境では、食事のありがたみを忘れてしまうことがあります。けれど、しっかりと空腹時の食事は、それだけで驚くほど美味しく感じられます。一日一食であれば、その一食を心から楽しむことができるでしょう。
=イスラム教のラマダン=

世界には「断食」を文化として取り入れている地域もあります。イスラム教の「ラマダン」では、30日間、日の出から日没まで、太陽が顔を出している間は、完全に飲食を断ちます。
お金持ちも貧しい人も、等しく空腹や渇きを味わうことで、恵まれない人々への思いやりと慎み深さを育みます。そして、日が沈んだ後は、家族や友人、仲間たちと一緒に食事することで、食への感謝と命の尊さを学んでいるのです。

3. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
健康は、医療によって与えられるものではありません。日々の生活習慣の積み重ねによって育まれていくものです。食事は、その土台です。食べない食事法が、すべての人に合うわけではありません。でも、いまの食生活にもし違和感があるのなら、食事の回数を見直した方がいいかもしれません。
大切なのは、自分の身体の声を聞くこと。「食べすぎているな」と感じたら、まずは一食減らしてみる。間食を控えてみる。夜食をやめてみる。それだけでも、身体と心の小さな変化を実感できるはずです。
自分に優しく、人に優しく。
自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。
それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

