すべての人が”生まれてきて良かった”と思える世界へ。「ジャパンハート」は、医療の届かないところに今日も医療を届けています。
皆様、こんにちは。
治療すれば助かる命があります。AIによるスピーディなワクチン開発、がんの免疫療法、手術支援ロボットの導入など、現代医療は年々進化を遂げており、救われる命は増えています。更には、健康寿命を延ばす研究も進められており、最先端医療により100歳を超えても若々しく元気に過ごせる社会(人生100年時代の到来)が、いよいよ現実味を帯びてきました。その一方で、世界には、基本的な医療さえ受けられない人たちがいます。貧しさから医療を受けられない国・地域、医療にアクセスしにくい僻地や離島、病気と闘う子どもたちの心、災害によりインラフが崩壊した被災地など、医療が届きにくいところはまだまだ多く存在しています。
そこで今回は、「医療の届かないところに医療を届ける」ために国内外で根気強く活動されている国際医療ボランティア団体「ジャパンハート」さんをご紹介したいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、国や地域、人種、政治、宗教、境遇を問わず、誰もが”生まれてきて良かった”と思える社会の実現に、少しでも関心を持って頂ければ幸いです。
2004年に設立された日本発の国際医療NPOです。東南アジアを中心とする国内外で、医療の届きにくいところに必要とする医療を提供すると共に、人々の心身の健康維持と改善、そして、安らかな死を迎えられるように人生の質を高めるための支援活動を行っています。ミャンマー、カンボジア、ラオスでは子どもの診療・手術を無償で行い、大規模災害が発生した地域には医療チームを派遣されています。また、目の前で苦しんでいる1人と向き合う「心を救う医療」を大切にされており、小児がんの子どもと家族の外出支援も行っています。
=ビジョン=
すべての人が、生まれてきて良かったと思える世界を実現する。
=ミッション=
医療の届かないところに医療を届ける。
NCDs(非感染症疾患)による死亡減少に貢献したことが評価され、国連の「UNIATF Award 2024」に日本で唯一受賞されています。
2. 世界の医療課題 -医療が届きにくいところ
2-1. 貧しさから医療を受けられない国・地域
医療サービスを受けるための費用は高額で、貧困層にとっては大きな負担となります。世界には、経済的な理由から必要な治療を諦めてしまう人たちが今も大勢いるのです。開発途上国の中には、そもそもの医療インフラが整備されていなかったり、健康や衛生に関する正しい教育が為されていない地域もあり、病気の予防や早期治療を難しくさせています。
提供:認定NPO法人 ジャパンハート「ホームページ」
伝統的な治療法や習慣が優先されて、近代医療が軽視されてるケースもあるんだ。
2-2. 医療にアクセスしにくい僻地や離島
先進国、開発途上国を問わず、医療サービスは人口の多い都市部に集中しています。その一方、僻地や離島では医療施設の数が少なく、医療従事者も慢性的に不足しています。特に、専門的な医療を提供できる病院は限定されるため、数百キロも離れた都市部の病院まで行かなければならないことも珍しくありません。さらに、交通手段が限られている離島では、悪天候や自然災害によって医療へのアクセスが遮断されることがよくあります。このような地域では、地理的な制約により、必要なときに必要な医療を受けることができない状況が続いています。治療すれば治るはずの傷病であっても、医療を受ける機会に恵まれずに命を落としてしまうことさえあるのです。
2-3. 病気と闘う子どもたちの心(メンタルケア)
闘病には、身体的な苦痛だけでなく、治療に伴う不安や孤独感、疎外感、将来への恐れなどの精神的なストレスも伴います。多感な時期にある子どもであれば、なおさら大きなものになります。もちろん、その家族にも精神的な負担がのしかかります。しかし、小児専門の精神科医や心理士などは不足しており、適切なメンタルケアを受けられないのが現状です。一部の医療機関では、メンタルケアに特化したプログラムやサポートが整備されていますが、全国的にはまだ不十分です。
2-4. 災害によりインラフが崩壊した被災地
2024年元日に発生した能登半島地震の死者数は、現在426名になりました(2024年11月1日時点)。徐々に死者数が増え続ける理由は、「災害関連死」にあります。これは、長引く避難生活による持病の悪化や精神的ストレスによって心身に不調をきたしたことなどが要因となった死です。2016年の熊本地震の死者数の約8割が災害関連死だったことからも、災害発生直後の救命救急医療だけでなく、避難所における看護や介護、メンタルケアを含めた中長期的な支援も必要なのです。災害大国であり、南海トラフ地震や首都直下地震が懸念されている日本では特に大きな課題です。
参照:日本財団ジャーナル「世界の2人に1人が、お医者さんにみてもらえない?」
3.「ジャパンハート」の活動紹介
ジャパンハートさんは、2004年の設立以来、「医療の届かないところに医療を届ける」を理念に、国や地域、人種、政治、宗教、境遇を問わず、誰もが“生まれてきて良かった”と思える社会のために活動されています。その活動は治療にとどまらず、社会福祉、医療人材の育成、子どもの教育、自然災害発生時の緊急救援にまで広がり、これまでに6カ国で展開されています。
In ミャンマー
2021年2月に発生した軍事クーデター以降、ミャンマー国内の情勢は今も不安定であり、必要な医療を受けられない人たちが大勢います。特に、以前より専門家の少なかった小児医療分野では深刻な状況が続いています。
ジャパンハートさんは、命がけで受診される患者さんたちに高度で安全な治療を提供すべく、日本人医師による小児専門病院での治療や技術指導、研修を行っています。その成果もあり、ワッチェ慈善病院では、現地の医療従事者のみで多くの治療できるようになりました。治療を待ち望んでいる子どもたちはまだまだたくさんいますが、自国の人たちを自分たちの力で救う医療が確立しつつります。
創設者である小児外科医 吉岡秀人氏がミャンマーで始めた活動が、今や国籍をも超えて200名以上のスタッフが結集する団体となりました。
In カンボジア
20年間にも及んだ内戦の爪痕が今なお残るカンボジアでは、1歳に満たない子どもが年間 約7,000人も亡くなっています。高額な医療費を払えず、治療を断念せざる終えない小児がん患者が多いのが、その一因です。カンボジア国内の小児がん患者は年間 約600人いると推測されていますが、実際に医療機関を受診している患者は、その1/3程度にとどまります。
ジャパンハートさんのカンボジアでの活動は、2009年の巡回診療から始まりました。2016年からは、多くの寄付によって建設された「ジャパンハートこども医療センター」を拠点に、先進国との生存率格差が著しい小児がんを含む、小児全般の病気に対して、無償医療を提供しています。また、「持続可能な医療の実現」に向けて、病院での運営体制の強化や医療を志す貧困層の若者への奨学金制度などを通じて、現地の医療従事者の育成にも注力されています。
2025年10月には、アジアの新たな高度医療拠点として、200床規模の総合小児医療センターを建設する予定だよ。10億円を超える開設費用は、国内外で賛同するみんなの寄付によって賄われたんだ。
In ラオス
ラオスは、東南アジアの中でも人口が少なく経済成長の歩みも遅いため、「忘れられた国」とも呼ばれてきました。日本のような医療保険制度が機能しておらず、病院への受診や病気の治療が患者さんにとって大きな経済的負担となっています。そのため、具合が悪くなっても病院に行かず、受診したときには既に治療が難しい状態であったり、受診しても途中で治療をやめてしまうことがよくあります。
ジャパンハートさんは、ラオスの国民病である甲状腺疾患に特化した診療・治療活動を続けています。そして、2023年には、ラオス政府の承認を以って、小児がん治療プロジェクトが正式に始動しました。国内唯一となる国立子ども病院とパートナーシップを組み、未来を担う子どもたちを1人でも多くの命を救うべく、2024年度より本格的な医療活動を行っています。
In 日本
ジャパンハートさんは、専属のメディカルチームを組織しており、平時は離島や僻地の病院での地域医療に貢献し、有事の際には被災地での支援活動に当たっています。この取り組みは、深刻な人材不足に悩む地域医療を支えるだけでなく、都市病院や大病院で離職した潜在看護師さんや総合的な医療を学びたいという意欲の高い看護師さんたちのニーズにも応えた「協働」となっています。
また、小児がんと向き合う子どもとそのご家族を対象にした「スマイルスマイルプロジェクト」も展開しており、医療者から離れることで不安を感じてしまう外出・旅行を楽しんでもらえるように、ジャパンハートの医療者さんが付き添い、その思い出づくりをお手伝いしています。
参考:認定NPO法人ジャパンハート「2023年度 年次報告書」
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
世界には助けられる命があります。現在の日本は先進国であることすら危ぶまれ、お金も人材も、人々の心も余裕がない時代になっています。そんな苦しい中、「なぜ海外の人たちまで救わなければならないのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、世界は繋がっています。日本から遠く離れた地で救った命や経験が海を越えて、やがて日本の子どもたちへ還元されていくことは、この国の未来を救うことに繋がります。医療の成果は、自らの意思で行動したすべての人たちの総和で決まります。「ジャパンハート」さんは、世界のため、日本の未来のために今日も「心を救う医療」を続けています。その活動に皆様の心が少しでも動いたのなら、ご自身の意思で、ご自身に合った方法で応援して頂けると幸いです。
自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。