人と社会

種からカップまで。「海ノ向こうコーヒー」には、農家さんと紡いできた重厚なストーリーと、それらが織りなす深い味わいがあります。

otobokezizou

 皆さん、こんにちは。

 フェアトレードという言葉を聞いたことはありますか?人権や環境に配慮して生産された製品を「適正な価格で取引する」ことであり、エシカル消費に関心を持つ若者を中心に世界的に広がっています。しかし、日本における認知度は40%に満たず…市場もまだまだ小さいのが現状です。そこで今回は、日本におけるフェアトレード事情に触れつつ、「海ノ向こうコーヒー」というブランドについてお話ししたいと思います。美味しいコーヒーを届けるだけでなく、現地の農家さんと共に持続可能なコーヒー栽培を実現させるために、失われつつある森林を守るために取り組まれている事業です。この記事が、コーヒーカップの向こう側、海の向こうの産地について想い馳せるキッカケになれば嬉しいです。

 100年先も続く農業を目指し、農業の世界に新しい風を起こしている株式会社「坂ノ途中」さんの提供するコーヒーブランドです。「遠くに思いを馳せる、想像力を。」をコンセプトに、スタッフさんが海の向こうの産地に通い、地域のニーズに合わせた栽培方法や精製プロセスの見直し、資金面や販路構築のサポートなどを行っています。また、コーヒーづくりに取り組む中で、森林減少の改善や農村部での雇用創出などの課題解決にも貢献されています。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

コーヒーの美味しさはもちろん、産地の背景事情や農家さんたちが抱える課題にも向き合いたい、そんな方にオススメのブランドです。

2. 日本のフェアトレード事情

2-1. フェアトレードとは?

 フェアトレードとは、人権や環境に配慮して生産された製品を「適正な価格で取引する」ことです。また、寄付や援助ではなく、生産者さんたちが自らのビジネスによって課題を解決していく取り組みでもあります。

バナナやコーヒー、カカオ、紅茶、コットンなどの農産物の多くは、開発途上国で生産されています。先進国に住む私たちは、これらの製品を安く手軽に買うことができます。しかし、安さには必ず理由があります。実際には、私たちが本来払うべき多くの負担を生産者さんやその国の環境に押し付けているだけなのです。その結果、生産国では、貧困や児童労働、環境破壊などの様々な問題が解決されないままになっています。フェアトレードは、文字通りの「公正な取引(貿易)」です。フェアトレード製品を購入することは、生産国の環境を維持し、そこで働く生産者さんたちに適正な賃金が支払われることに繋がります。それは、彼ら彼女らが持続可能なビジネスを、自立できるだける生活基盤を築くことに繋がっていきます。最終的には、国家間の不公平な取引をなくし、公正・公平な貿易が実現されることで、取引を行う国同士が共に豊かになることが期待できます。

コツメちゃん
コツメちゃん

「フェアトレード=社会貢献、ボランティア活動」ではなく、きちんとしたビジネスであることを理解しておくことが大切だね。

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

日本政府も2023年12月に「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き」を公表し、企業による人権尊重の取り組みとその理解の促進を図っています。

2-2. フェアトレードの現状と課題

 2024年現在、持続可能な開発目標SDGsの国内認知度は90%を超え、消費者の間でもサステナブルな製品へのニーズやフェアトレード製品への関心が高まっています。しかし、フェアトレード後進国の日本では、まだまだ超えるべき課題が残っています。

課題① 価格が高い…

 これまでの「異常な安さ」に慣れてしまった私たち消費者から見れば、フェアトレード製品は高価に映ります。「資本主義的な効率」とは異なる生産方式のため、コストは割高になりますし、(後述する)認証ラベルの取得・維持にも費用が掛かるため、同ジャンルの中ではどうしても高値になってしまいます。フェアトレードの認知度が低く、市場規模がまだまだ小さい日本では、その傾向が特に強く出ています。

出典:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン「Annual Report 2023」

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

日本のフェアトレード市場規模は、2023年には200億円を超えました。しかし、GDPが近いドイツの市場は3,250億円であり、まだまだ開き(伸びしろ)があります。

課題② 品質維持・向上が難しい…

 フェアトレード製品の生産者さんたちは小規模事業者である場合が多く、大規模生産での品質管理を用いることはできません。農産物であれば、どうしても気候の影響を受けますし、手づくりの工芸品であれば均一な出来栄えを維持することが困難となります。もちろん、フェアトレード製品だからといって品質や満足度がイマイチだと誰も買ってはくれません。そのため、彼ら彼女らのビジネスが軌道に乗るまで、産地の特徴や生産者さんの能力を尊重・考慮しながら、品質維持・向上の取り組みをサポートしていくことも必要です。

課題③ 認証ラベルの取得・維持が大変…

 第3者機関による認証ラベルは、私たち消費者に安心感を与えてくれます。しかし、フェアトレードの認証ラベルを取得する条件は厳しく、ビジネスを始めて間もない生産者さんにとっては高いハードルとなります。また、一度取得すれば終わりではなく、その維持にもコストが掛かることも悩みの種となっています。実際、取得基準を満たしていながらも、認証のための金銭的余裕がなく、フェアトレード市場に参加できない生産者さんも大勢いらっしゃいます。

コツメちゃん
コツメちゃん

認証ラベルの有無に関わらず、フェアトレード製品やその企業の取り組みを自分の目で見て判断する姿勢が大切だね。

3.「海ノ向こうコーヒー」の3つ魅力!

おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵

明言はされていませんが、その取り組みは紛れもないフェアトレードであると言えます。

Point1:サステナビリティなコーヒー栽培への取り組み

 海ノ向こうコーヒーでは、コーヒー農園の様子や農家さんのことをきちんと把握し、品質向上・改善のための技術提供やワークシップ、環境に配慮した栽培方法の提案、収穫、精製のトレーニングを行っています。

例えば、コーヒーの実の熟度が揃っているか確認するための道具(チェリーパドル)や、コーヒー豆を乾燥させるための棚(アフリカンベッド)の作り方など、各産地のアイデアやノウハウを他の産地にも共有しています。また、ラオスでは従来の焼畑に代わり、「アグロフォレストリー」に基づいたコーヒー栽培の普及を進めています。これは農業と林業をかけ合わせた「森をつくる農業」とも呼ばれる農法で、自然の生態系が保たれるだけでなく、コーヒーの豊かな風味をつくり出すことにも繋がります。加えて、農家さんや現地のパートナー企業のビジネスを安定させるために、コーヒーの販売先が日本市場だけに偏らないよう販売先を分散させるサポートもしています。自社だけでなく、お互いにとっての長期的にプラスになるような関係性を築いています。

Point2:農家さんと紡いできた重厚なストーリーがある

 私たち消費者が、日常の中でコーヒーの産地のことを知る機会は滅多にありません。しかし、コーヒーがどういう方法でつくられたのかを知らなくては、農家さんたちを評価することはできませんし、「適正な価格」に納得することもできないでしょう。

海ノ向こうコーヒーでは、9ヵ国の農家さんと直接繋がっています(2022年4月時点)。その多くは山地で暮らしているため、会いに行くだけでも大変です。時には山道を何時間も車に揺られて現地へ行くこともあります。しかし、そうやって苦労して現地に赴き、農家さんたちのリアルを体験しているからこそ、どんな場所で、どんな人たちが、どんな想いでコーヒーをつくっているかが分かるのです。ホームページでは、詳しい「コーヒー産地のはなし」を知ることができますので、是非一度、訪れてみてください。

Point3:品質へのこだわり

  海ノ向こうコーヒーには、数々のコーヒー産地に通い技術指導を行ってきた栽培技師、自家焙煎コーヒー店で働いていた焙煎士、生豆と焼豆の両方の品質管理に携わってきたベテラン、輸出入業務を行うスタッフなど、コーヒーに関する様々なプロフェッショナルが集結しており、美味しいコーヒーを届けられるよう多角的な視点で日々の改善に努めています。

例えば、日本人の味の好みやコーヒー豆の見た目への強いこだわりがあることを農家さんに伝え、品質管理のポイントや欠点豆を少なくする方法を教えたり、精製過程で発酵度合いが強すぎる場合は調整を依頼したりと、きめ細かなコミュニケーションを行っています。また、栽培や精製の過程でどうすればコーヒーの品質が上がるかを学んでもらうためのワークショップも各地で開催しています。

コツメちゃん
コツメちゃん

各産地の特徴やコーヒーが育てられた過程を知っているからこそできるオリジナルのブレンドコーヒーも魅力の1つです。

参考:「数字で見る海ノ向こうコーヒー」

参考:坂ノ途中の報告書2022

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 フェアトレードによって生産者さんたちの生活や自然環境が改善していることは、紛れもない事実です。しかし、決して万能薬ではありません。収入が何倍にも増えて生活が見違えるように良くなったというケースは稀ですし、失われた森林が回復するまでには長い年月がかかります。フェアトレードの取り組みを促進し、より多く生産者さんが参加できるようにするには、理解ある消費者を1人でも多く増やし、市場を広げ、製品を買って頂く機会を増やしていくことが不可欠です。「海ノ向こうコーヒー」は品質だけでなく、産地の暮らしや環境にも目を向けたコーヒーブランドです。そこには、農家さんと紡いできた重厚なストーリーと、それらが織りなす深い味わいがあります。その味に少しでも興味を持って頂けましたら、是非一度、お店を覗いてみてくだい。きっとそれが、フェアトレードを世界に広げる一助になるはずです。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
記事URLをコピーしました