人と社会

“石”から紙やプラスチックの代わりをつくる。テックカンパニーの素材革命「LIMEX(ライメックス)」

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 水や森林、そして、石油。現代の便利で快適な暮らしは、こうした「資源」の上に成り立っています。しかし、地球の資源には限りがあります。同じものを使い続けていれば、いつかは枯渇してしまいます。もしこれらの資源に頼ることができなくなったら… 私たちの生活はどうなるのでしょうか?次の世代に「豊かさ」を残すことができるでしょうか?

未来へとつなぐ循環型社会を実現するためにも、限りある資源を使い続けること自体を見直す必要があるのかもしれません。そこで今回は、地球上のどこにでもある「石」から、紙やプラスチックの代わりをつくっているテックカンパニー「TBM」さんと、そんな魔法のような新素材「LIMEX」についてお話ししたいと思います。便利さを諦めることなく、とくに意識することもなく、環境に優しい暮らしを送ることができる— そんな可能性と希望に満ちた「石の物語」に、少しでも興味をもって頂けたら嬉しいです。

 テックカンパニーTBMさんの「LIMEX(ライメックス)」は、地球上に豊富に存在する石灰石(炭酸カルシウム)を主原料にした新素材です。
この素材を使うことで、紙のように文字を書いたり印刷できるシートや、プラスチックのように軽くて丈夫な製品を生み出すことができます。つまり、木を切らなくても、大量の水や石油を使わなくても、私たちの暮らしを支える様々なアイテムをつくることが可能なのです。利便性を諦めることなく、環境負荷を減らせる素材として、現在、国内外10,000以上の企業・自治体で導入されています。

参考:株式会社TBM「ホームページ」

おとぼけ地蔵
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経済産業省の育成プログラム「J-Startup」への選出や、包装業界で権威のある「WorldStar Global Packaging Awards 2025」での受賞など、国内外から高い評価を得ています。

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2. 地球が抱える「資源」の課題

 私たちが毎日当たり前のように使っている紙やプラスチック。これらは、現代の便利で快適な暮らしを支えています。しかし、その裏側で積み重なってきた代償が、今の環境問題です。世界人口は、2050年には97億人に達すると予測されており、それに伴う課題の深刻化が懸念されています。

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2-1. 迫りくる「水の貧困」

 あらゆる生命の源である「水」の課題は、特に深刻です。世界的に水は偏在資源であり、すでに水不足に陥っている地域も多くあります。2050年には、利用可能な水へのアクセスはさらに困難となり、世界中で48~57億人もの人たちが「水の貧困」に直面すると言われています。限られた水を巡って、新たな社会的対立や争いが起こる可能性さえあるのです
水資源の豊かな日本も例外ではありません。日本は世界的な輸入大国であり、海外からの食料輸入を通じて、大量のバーチャルウォーターを消費しています。他国の水に依存している日本もまた、世界の水問題と無関係ではいられないのです

コツメちゃん
コツメちゃん

淡水は、飲み水や生活用水だけじゃなく、農業や工業用にも使われるから、人口増の影響を受けやすいんだ。

参考:WWFジャパン「企業に今、求められる水リスクへの視点」

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2-2. 失われつつある「自然のインフラ」

 森林は、野生生物たちの住処であると共に、CO2吸収による気温調節と水サイクルの制御を担う「自然のインフラ」です。しかし、世界では今も、様々な理由により、森の木々が姿を消し続けています。2024年だけでも約807万ヘクタール もの森林が消失しました(日本の国土の約2割に相当)。その9割は人為的なもの…食料生産のための農地拡大だけが理由ではありません。暮らしを支える「紙」の原料にも、かなりの森林資源が使われています
先進国では、デジタル化やペーパーレス化が進んでいますが、新聞や本、ティッシュやトイレットペーパーをはじめとする衛生用品、物流に欠かせない段ボールなど、紙の需要は依然として高い水準にあります。日本もまた、世界第3位の紙生産国であり、国民一人当たりの紙消費量も年間201kgにのぼります。今後、世界人口が増加すれば、それだけ紙の需要も、森林資源の消費量も増えていきます。

コツメちゃん
コツメちゃん

製紙には、木材だけじゃなく、たくさんの水も使われる。紙だから環境に優しい、とは必ずしも言い切れないんだ。

参考:WWFジャパン「森林保全と持続可能な紙利用」

参考:国際連合「The Sustainable Development Goals Report 2025」

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2-3. 石油から生まれる「消えない跡」

 資源を巡る課題の中でも、「石油」は別格です。石油から作られたプラスチックは、形を変えやすく軽くて丈夫な素材として、私たちの生活を劇的に豊かにしてくれました。今では、暮らしのあらゆる場所で使われています。しかし、プラスチックは、製造から廃棄に至るすべてのライフサイクルで、多量の温室効果ガスを排出します。また、丈夫で長持ちする性質が、土壌汚染や海洋プラスチックごみの問題を引き起こし、生物多様性に悪影響を及ぼしています。その生産量は増加の一途を辿っており、2050年には現在の約3倍にあたる11.8億トンに達すると言われています。

加えて、石油資源のほぼ100%を輸入に頼っている日本の場合、「経済安全保障上のリスク」も無視できません。世界人口の増加により、国家間の資源争奪戦が激化すれば、物価上昇やエネルギー価格の高騰など、私たちの生活への負担がさらに重くなっていきます。

参考:環境省「脱炭素に向けた資源循環をとりまく状況(2023年7月28日)」

3.「LIMEX」の3つの魅力!

 テックカンパニーTBMさんが独自開発した「LIMEX(ライメックス)」は、石灰石を主原料とした革新的な素材です。紙やプラスチックの代わりになれる高い機能性・汎用性を持ちながら、環境負荷を減らし、循環型社会を実現できるポテンシャルを秘めています。

おとぼけ地蔵
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チェーン店のメニュー表や、小売店のレジ袋、日用品のボトル容器など。LIMEXは、私たちの生活のすぐ近くで、もう使われています。

参考:株式会社TBM「Sustainability Report 2025」

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Point1:入手しやすく、持続可能な「石灰石」から作れる

 LIMEXの最大の魅力は、世界中に豊富に存在する石灰石(炭酸カルシウム)を主原料としている点です。紙の製造には木材パルプと大量の水を使用しますが、LIMEXはそれらを必要としません。木を1本も切ることなく、水の使用量も約97%削減できます。また、プラスチックの代替として使用する場合も、石油の消費を大幅に抑えることができます。
水や森林、石油といった枯渇リスクの高い資源に頼ることなく、それらを保全しながら、私たちの暮らしを豊かにする様々なアイテムをつくり出せるのです。加えて、資源輸入国である日本にとっては、海外からの調達リスクや石油価格の変動に左右されなくなる、という経済安全保障上の利点もあります。

コツメちゃん
コツメちゃん

石灰石は、日本国内で100%自給できる身近な資源。製鉄や建築、農業、医療、食品分野まで幅広く利用されてるんだ。

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Point 2:脱炭素(カーボンニュートラル)の一歩先をいく

 LIMEXは、大量の石油を必要としないだけでなく、原料調達から処分に至るライフサイクル全体で、温室効果ガス(GHG)の排出を抑制することができます。一般的なプラスチックと比較して、原料調達時のGHG排出量を約83%、焼却時も約58%削減します
また、近年では、工場から排出される二酸化炭素をもとに炭酸カルシウム(石灰石の主成分)を生成 ―それを原料とする「CR LIMEX(カーボンリサイクル・ライメックス)」の開発も進んでいます。これは、単に排出を抑制するだけでなく、「二酸化炭素を資源として再利用する」というカーボンニュートラルの一歩先をいくアプローチです。

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Point 3:既存インフラを利用したマテリアル・リサイクル

 リサイクル効率が極めて高いのも、LIMEXの利点です。使用済みや製造時に出た廃材を回収・成形し、再び新たなLIMEX製品として生まれ変わることができます。単なる代替で終わらず、「使った後」のことまで考えられた循環の仕組みです。しかも、LIMEXは、既存のプラスチック製造・成形設備をそのまま利用できる汎用性も備えています。
アフリカやサウジアラビアなどの水や森林が不足している地域でも、その土地で採れる石灰石を使い、既存の設備を活用しながら、紙やプラスチックの代わりをつくれる。この「導入のしやすさ」が、世界中でLIMEXの採用が進んでいる理由の1つです。

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4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 足元に転がっている、ありふれた「石」。そこから、私たちが毎日使う紙やプラスチックの代わりが生まれる。「LIMEX(ライメックス)」は、そんな魔法のような技術でつくられた、現実に存在する素材です。それは、「今あるものを活かし、限られたものを大切に守る」という、とても賢く、とても優しい循環のカタチです。
チェーン店のメニュー表、仕事で使う名刺、買い物のレジ袋、日用品のボトル容器など —暮らしの中で手にする多くのアイテムが、もしLIMEXで作られていたら、私たちは意識することもなく、水を守り、森の木々を救い、地球をきれいにする「小さなお手伝い」ができるようになります。

世の中には、資源を巡るたくさんの課題があります。でも、それを解決しようとする人や技術も、同じくらいたくさんあります。興味をもってこの記事を読んでくださった皆様も、そのうちの1人です。世界を変えるのは、特別な誰かの力ではなく、私たち1人ひとりの小さな選択の積み重ねです。世界はきっと良くなる。その希望とともに、「あ、これ石からできているんだ」という嬉しい驚きが広がることを願っています。

自分に優しく、人に優しく。 自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。 それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

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おとぼけ地蔵
おとぼけ地蔵
エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。また、和のテイストが大好きです。
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