笑顔で付き添える、安心して離れられる。子どもの入院に付き添う家族を支える「キープ・スマイリング」

もしも突然、自分の子どもが入院することになったら、どんな生活を想像するでしょうか?
子どもの入院に付き添う生活は「大変そう」と思うかもしれません。しかし、実際は、大変どころではなく、想像以上の緊張と疲労が続く過酷な生活です。
食事も睡眠も十分に取れず、仕事を休まざるを得ない…積み重なる経済的な負担により、日常生活にも大きな影響を及ぼします。それでも多くの親御さんは、「子どものためだから」と弱音を吐かず、病室で闘う我が子のそばに居続けています。自分のことを後回しにしながらの看病やお世話で、体調を崩してしまう方も少なくありません。
そこで今回は、日本では見えにくい「付き添い入院」の現実と、それに耐え忍ぶ家族に温かい支援と応援を届けているNPO法人「キープ・スマイリング」さんについてお話ししたいと思います。子どもの笑顔をまんなかに。この記事を読んでくださった皆様が、子育てを社会全体で支える仕組みづくりに、少しでも関心を持って頂けたら嬉しいです。

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子どもが入院しても、子どもと家族のみんなが笑顔を失わないでいられる社会を目指して、過酷な”付き添い入院“に苦しむ家族への支援を行っている認定NPO法人です。
生活用品や癒やしグッズを詰め合わせた「付き添い生活応援パック」や、食の支援「ミールdeスマイリング」の無償配布、付き添い入院のノウハウや経験を共有する情報サイト「つきそい応援団」の運営など。
2014年の設立から10年以上、我が子のために身を粉にして看病する親御さんたちに「もの・食・情報」というカタチで支援と温かい応援を届け続けています。

付き添い入院の環境改善への貢献が認められ、2025年には「保健文化賞」を受賞されています。

2. 制度のスキマに隠れた「付き添い入院」の現実
小さな子どものいる家庭なら、子どもの入院は、いつ起こってもおかしくありません。入院中の子どもにとって、お母さんやお父さんが近くにいてくれる安心感は何にも変えがたいものです。
しかし、小児医療の現場では、その安心の裏側で、家族が想像以上に大きな負担を背負っている現実があります。
2-1.「我が子のため」だからこそ、声に出せないSOS
日本の小児医療では、看護師による「完全看護」が原則とされています。でも実際は、子どもが入院したとき、親御さんが病室に泊まり込んでお世話をする「付き添い入院」が常態化しています。
背景には、医療現場の人手不足と、何より「不安がる我が子のそばにいてあげたい」という家族の深い愛情と強い責任感があります。

しかし、付き添い入院の環境はとても過酷です。
医療施設の多くは、そもそも家族の付き添いを想定して設計されていないため、家族用のベッドやシャワー、洗濯設備はなく、プライバシーも十分に確保されいません。また、付き添う家族は「患者」ではないため、病院や行政から一切のサポートを受けることもできません。食事も睡眠も満足にとれず、経済的な負担も大きい…それでも、親御さんは自分のことを後回しながら、入院中の我が子を献身的にケアしています。
この状況は、長年「家族の愛情」という言葉のもとに、社会の中で見過ごされてきました。
参考:厚生労働省「入院患者の家族による付添いに関する実態調査概要(令和4年度)」
2-2. 家族の献身ではなく、もはや「犠牲」

付き添い入院中に求められる子どもの世話やケアは、多岐にわたります。食事介助、排泄ケア、清潔ケア、服薬、見守り、寝かしつけ、遊び、精神的支援など。中には、人工呼吸器の管理やバイタル確認といった高度な医療的ケアを行っている例さえあります。
大規模な実態調査によると、付き添い家族全体の94.5%が、夜間にも子どもの世話や看護を行っています。また、慢性的な睡眠不足に加えて、過半数の方は食べる時間さえなく、付き添い中に「自分自身の体調を崩してしまった」と回答しています。付き添い入院は、「食事・睡眠・自由な時間」という心身の健康に不可欠な3つの基盤を著しく損なうものなのです。
2-3. 暮らしにのしかかる経済的負担
付き添い入院のために、働き方を変えたり、休職や離職せざるを余儀なくされることも少なくありません。仕事を休んだ分だけ家計収入は減る一方、日々の生活費や入院にかかる医療費は容赦なく積み重なっていきます。こうした経済的負担も、親御さんの心と体をじわじわと追い詰めていきます。

また、子どもの病状や病院の規則、他の家族の世話などの理由から、長期にわたり面会に通い続ける家族もいます。もちろん、彼らへの公的な支援はなく、かさむ交通費は重くのしかかっています。
我が子が病室で独り、病気で苦しい思いをしているのに、経済的負担から子どもに会う回数を減らさざるを得ない… 面会もまた、付き添い入院とは違った辛さがあるのです。

我が子のためを想うと、他に選択肢はないんだ…
3.「キープ・スマイリング」の取り組み
子どもの幸せを真ん中に。NPO「キープ・スマイリング」さんは、入院する子どもが親といつでも一緒に過ごせる環境を、そして、親御さんが笑顔で付き添える・安心して任せられる環境づくりに取り組んでいます。

根本解決のために、大規模調査や政策提言にも力を入れており、2024年の診療報酬改定にも繋がりました。
参考:NPO法人キープ・スマイリング「ANNUAL REPORT 2024」
➀ もので支援する「付き添い生活応援パック」
お子さんの看病のために片時もそばを離れられず、買い出しもままならない親御さん。その苦労を少しでも解消するために、子どもの長期入院(10日以上)に付き添う家族を対象に、食品や日用品、衛生用品などの生活物資を詰め合わせた「付き添い生活応援パック」を無償で届けています。この一箱が、病室という閉ざされた空間で孤立しがちな親御さんに、勇気と安心を与えています。
また、2025年からは、子どもの緊急・短期入院に対応した「付き添い生活応援パックライト」も提供しています。何の準備もなく、突然はじまる付き添い生活を身ひとつで耐え忍ぶ親御さんたちを支えています。


年間3,000個以上が全国の小児病棟へ発送されており、利用者アンケートでは5段階評価で平均4.8という高い満足度を得ています。
② 食で支援する「ミールdeスマイリング」
活動の原点である「ミールdeスマイリング」は、付き添い入院における深刻な「食の貧困」を解消するための取り組みです。
子どものケアで慌ただしい中、自分のために作ってくれた温かいご飯を食べる —その数分間だけは、ほっと一息つける、かけがえのない時間になります。
キープ・スマイリングさんは、ボランティアの方々と一緒に、ファミリーハウスでごはんを手作りしたり、地域の飲食店と協力して温かいお弁当を届けています。


この温かい食の支援を全国に広げるために、複数のパイロット事業も展開してるんだ。
③ 情報で支援する「つきそい応援団」
初めての付き添い入院の不安を解消し、子どものケアに専念できるように、先輩ママさんパパさんの経験談や知見、工夫、その他の役立つ生活情報が掲載されたクチコミサイト「つきそい応援団」を運営しています。同じ境遇を経験した家族の「声」がエールとなって、他の家族に優しく、力強く語りかけてくれる。みんなで支え合い、付き添いの不安を安心に変えていく優しい仕組みです。

4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
体調を崩して心細いとき、お母さんやお父さんが笑顔でそばにいてくれる。その安心感は、子どもにとって一番のお薬になります。でも、その笑顔の裏側で、眠れない夜を過ごし、食事もろくに取れず、不安と疲労の中で踏ん張っている家族がいます。
「我が子のためだから」と頑張っている人ほど、その辛さを口にはできません。付き添い入院は、何も特別なことではありません。子どもを持つ親であれば、明日にでも起こるかもしれない出来事です。だからこそ、「家族の愛情」という言葉で終わらせてはなりません。
NPO「キープ・スマイリング」さんは、そんな親御さんたちに「あなたは一人じゃない」と寄り添い、もの・食・情報による支援を温かい応援とともに届け続けています。その取り組みは、付き添い入院という見えにくい社会課題に光をあて、少しずつ変えようとしています。
この現実を「知る」こと、「関心を持つ」こと、他の誰かに「伝える」こと。皆様の小さな行動の1つひとつもまた、付き添い入院の環境を少しずつ変えていきます。その変化はきっと、入院する子どもたちの笑顔と生きる力につながっていくはずです。笑顔の革命を、どうか一緒に。
自分に優しく、人に優しく。
自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。
それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

