車いすでもあきらめない世界へ。バリアフリーをみんなでつくる「ウィーログ」

「このお店に行ってみたい!でも、車いすで入れるかな…」
そこは、歩いて行ける場所。でも、車いすユーザーさんにとっては少し違います。
お店の入り口に段差はないか。
スロープやエレベーターはあるか。
車いすで使えるトイレはあるか。
駅から目的地まで、安全に通れる道はあるか。
こうした情報が「行けるかどうか」を左右することがあります。
世の中にバリアフリーが広がっても、情報を知らなければ安心して出かけることはできません。
今回は、そんな「情報のバリア」をなくすべく取り組んでいる認定NPO法人「ウィーログ」さんについて、お話ししたいと思います。一人でも多くの「行ってみたい」を叶えたい。この記事が、車いすユーザーさんの見ている世界を知り、日常の当たり前を見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。
1.「ウィーログ」って、どんな団体?

障害者や高齢者、ベビーカー利用者など、移動や日常生活に困難を抱える人たちに向けて、バリアフリー情報の発信や調査、研修、普及啓発などに取り組んでいる認定NPO法人です。
活動の中心になっているのが、バリアフリーマップ「WheeLog!」。車いすユーザーさんが実際に通ったルートや、利用した施設・設備などを共有し、みんなで少しずつ便利にしていく地図アプリです。
この道なら通れた。このお店は車いすで入れる。ここに利用できるトイレがある。一人の体験が地図に残り、次にその場所を訪れるユーザーさんの安心につながる。そんな助け合いの仕組みが魅力です。

バリアフリー推進の取り組みが評価され、「第7回ジャパンSDGsアワード(内閣総理大臣賞)」や「Public of The Year 2024(学術・文化部門)」などを受賞されています。

2. 車いすから見える世界
スロープやエレベーター、多目的トイレ、車いす用スペースなど。日本のバリアフリーは、学校や病院、交通機関、商業施設などにも広がり、いまや日常の景色として溶け込んでいます。けれど、車いすユーザーさんの視点に立ってみると、まだまだ課題は残っています。

2-1. 数センチの段差が、バリアになる
私たちが何気なく歩いている道。
でも、車いすユーザーさんにとっては、移動を難しくするものが意外とあります。
歩道の段差や溝、階段、狭い通路、手動のドアなど。こうした物理的なバリアのために、車いすユーザーさんは、「行きたい」よりも先に、「行けるかどうか」を考えなくてはならないのです。

参考:内閣府「令和5年度バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書」
2-2. 届きにくい「情報」のバリア
法改正や環境整備もあり、日本のバリアフリーは少しずつ前に進んでいます。ただ、物理的なバリアをなくしても、その情報を知らなければ、「行けるかどうか」を判断することはできません。

お店のホームページには「車いす対応」と書かれている。けれど…
入り口はどうなっているのか?
店内には十分な広さがあるのか?
駅からの道は大丈夫だろうか?
こうした細かな情報まで分からないと、安心して出かけることはできないのです。本当の意味でのバリアフリーを実現するためには、こうした「情報」のバリアを取り除くこと。必要とする人にバリアフリー情報を届けることもまた大切です。
3.「ウィーログ」の取り組み
情報、心・意識、物理、制度。ウィーログさんは、これら4つのバリアを少しずつ取り除き、誰もが「行きたい」「やってみたい」を叶えられるバリアフリー社会を目指しています。中でも、「情報」のバリアフリーへの取り組みは画期的です。


2026年時点で、WheeLog!アプリのダウンロード数は20万回を超え、イベント参加人数も累計3,000人以上。多くの企業・団体さんからも支援されています。
参考:認定NPO法人ウィーログ「2025年度アニュアルレポート」
① 情報のバリア|みんなでつくるバリアフリーマップ
「情報」は、私たちの選択肢を広げてくれます。
バリアフリー情報があれば、お出かけの機会も増え、暮らしにも彩りが出てきます。
その情報を届けるために、ウィーログさんはマップアプリ「WheeLog!」を無償提供しています。
この地図をつくるのはウィーログさんでなく、ユーザーさん全員。一人ひとりが投稿・共有した「行けた」という経験が、他のユーザーさんの「行きたい」につながる。そして、その人の経験がまた地図に加わっていく。使う人が増えるほど、みんなの選択肢も増えていく。「みんなでつくるバリアフリーマップ」ならではの魅力です。


WheeLog!は、英語や中国語、スペイン語など10言語にも対応。世界中の人がバリアフリー情報を共有・利用することができます。訪日外国人の方にも優しい設計です。
② 心・意識のバリア|同じ街を、違う視点で歩いてみる
普段なら気にならない小さな段差や坂道、通路の幅も、車いすの視点から街を見てみると違って見えるものです。

「知らなかった」を、「知っている」へ変える。
ウィーログさんは、歩ける人と車いすユーザーさんが一緒に街を歩き、バリアフリー情報を集める「車いす街歩き」イベントを全国各地で展開しています。これが「心のバリア」に気づき、小さくするきっかけにもなっています。
③ 物理のバリア| バリアのない街づくり

「行けない」を減らし、「行ける」を一つずつ増やしていく。
公共施設や観光地、店舗などのバリアフリー調査も、ウィーログさんの大切な活動です。アプリでバリアフリー情報を届けるだけでなく、ユーザーさんから届いた「行けなかった」体験や実際の現地調査から課題を可視化。必要に応じて、街や施設の改善提案へとつなげています。
④ 制度のバリア|当事者の声を、社会のバリアフリーへ
バリアフリーを広げるには、一人ひとりの善意だけでなく、社会の仕組みそのものを変えていくことも必要です。

ウィーログさんは、アプリや調査を通して集まった車いすユーザーさんの声をもとに、国や自治体への政策提言(アドボカシー)にも取り組んでいます。2025年には国連本部で行われた「ハイレベル政治フォーラム」に登壇。国土交通省バリアフリー実証実験へのパートナー参画や意見提出など。今後のバリアフリーに向けた制度づくりに大きく貢献しています。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
車いすを使うのは、何も身体に障害をもつ方だけではありません。加齢や怪我、病気によって歩くのが難しくなった方もいます。車いすは、私たちが思っているよりずっと身近な存在であり、いつかお世話になる日がくるかもしれません。だからこそ、いま歩ける方であってもバリアフリーを考えることには、きっと意味があるのです。
でも、大きなことをする必要はありません。物理のバリアだけでなく、心・意識、制度、そして情報のバリアがあることを知る。車いすでも利用できるお店を投稿してみる。自身の「行けた」体験を共有してみる。私たちのちょっとした行動でも、きっと誰かの「行きたい」を後押しする小さなきっかけになるはずです。
自分に優しく、人に優しく。
自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。
それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。




