笑顔のバトンを次の世代へ。不登校の子どもに新しい学びの場を届ける「スマイルバトン」

ある朝、子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、皆様はどうしますか?
やさしく背中を押してみる、理由を聞いてみる、学校の先生に相談してみる。
でも、それでも変わらなかったら…
実はいま、日本の小中学校で、35万人を超える子どもたちが「不登校」の状態にあります。これだけ多くの子どもたちが、学校へ行けないことに苦しみながら、心に重たいものを抱えて過ごしているのです。
そこで今回は、不登校に悩み苦しむ子どもたちに、新しい居場所と学びの選択肢を届けているNPO法人「スマイルバトン」さんについて、お話ししたいと思います。この記事が皆様にとって、今を生きる子どもたちの実情を知り、その子たちの笑顔のために「何ができるのか」を考えるきっかけになれば嬉しいです。
1.「スマイルバトン」って、どんな団体?

「いい転機、つくろう」というミッションを掲げて設立された団体です。NPO法人と株式会社の2つの側面を持ち、相互に補完し合うことで持続可能な教育支援を実現しています。
NPOとしては、不登校の児童・生徒のためのオルタナティブスクール「学藝の森CoE(こえ)」の運営など、子ども視点での教育環境の改善を目指しています。株式会社としては、子どもを支える先生をエンパワーメントすることで、教育現場のなり手不足や離職といった課題解決を目指しています。
活動の中核は、「教育と福祉」。その運営ノウハウを全国に無償公開し、社会全体で子どもを育む新しい仕組みを広げています。

2025年にはForbes JAPAN「NEXT100」にも選出され、その画期的な取り組みに注目が集まっています。

2.「学校に行きたくない」が止まらない
文部科学省の調査によると、日本全国で「不登校」状態にある小中学生は35万人を超え、12年連続で増加しています。近年は特に、低学年化が進んでおり、子どもたちからの切実なSOSが止まらない状況です。


不登校の子どもは、クラスに2〜3人はいる。誰にでも起こり得ることなんだ。
参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
2-1. 逃げ場のない画一教育
学校に行けない子どもの増加 —その背景には、日本の小中学校の約98%が公立学校であるという構造的な問題があります。誰もが一定水準の教育を受けられる一方で、学校の教育方針や環境、先生との相性が合わなかったとき、公教育以外の選択肢がほとんど存在しません。学校に行けないと、子どもは学びの場を失ってしまう…この選択肢の少なさが大きな壁となっています。

不登校の理由として多いのが、「学校生活に対してやる気が出ない」「不安・抑うつ」「生活リズムの不調」―これらは、子どもたちの声にならないSOSなのかもしれません。
2-2. 学びの選択肢は、まだまだ少ない
不登校の子どもたちが通える場(受け皿)としては、フリースクールなどの民間施設があります。
けれど、その数はまだまだ少なく、全国でも約700カ所ほどと言われています。
また、たとえフリースクールにたどり着けたとしても、経済的な理由で利用を断念する家庭が多いのが現実です。実際、民間教育への公的な補助が乏しいために、年間40〜90万円もの費用を保護者が負担しなければなりません。その結果、不登校児童の約75%が、学校以外の教育施設につながらず、自宅で過ごさざるを得ないという状況です。


低学年の子どもの場合、平日の「付き添い」が必要になることも多い…そのため、お母さんの仕事やキャリア、そして、家計にも影響が出ているんだ。
参考:こども家庭庁-委託事業「不登校のこどもを受け入れている民間施設等の 利用実態等の把握に関する調査研究報告書(令和6年度)」
2-3. 教育と福祉のはざま
不登校の子どもたちは、「学びの遅れ」だけでなく、自己肯定感の低下や孤独感、生活リズムの乱れなど、「心と身体の不調」を抱えていることが少なくありません。そのような子たちには、教育と福祉の両方のケアが不可欠です。

けれど、現在の日本では、支援の担い手が「教育」か「福祉」のどちらかに分かれており、両方の視点を持って子どもを支える人材や仕組みが不足しています。この空白が、社会とのつながりを取り戻していく子どもたちの歩みを重くしています。
3.「スマイルバトン」の取り組み
不登校の子どもたちとその保護者さんが孤立するのを防ぎ、社会とのつながりを取り戻すための支援をしています。教育と福祉が連携し、社会全体で子どもを育む持続可能な仕組みを広げています。

①「学藝の森CoE(こえ)」
一般的なフリースクールは、公的補助が乏しいために月額数万円の学費がかかるケースが多く、それが「行きたくても行けない」理由のひとつになっています。
けれど、スマイルバトンさんが運営するオルタナティブスクール「学藝の森CoE」では、月額16,500円(税込)という公立学校に近い経済負担で通うことができます。自主事業の余剰利益と寄付・助成金を組み合わせることで、保護者の負担を軽減。これにより、経済的な理由で諦めなくていい教育を実現しています。


平日の9時〜15時には、CoEを運営。15時以降や土日は同じ教室スペースで民間学童保育を行い、そこで得た利益をCoEの運営費に割り当てる仕組みです。
② 一人ひとりの「声」を聴く
オルタナティブスクールCoEでは、基礎学習と探究する学びを組み合わせた独自のカリキュラムを採用し、お昼には栄養士監修の手作りごはんを提供しています。多様な背景の子どもたちが、学年の垣根を越えて、一緒に遊び、学び、食卓を囲む―その温かな日常の中で、自己肯定感を育み、傷ついた心をゆっくりと取り戻していきます。

その他にも、放課後プロジェクトスクール「PARK(パーク)」や、おしごと体験教室「MEET SOURCE(ミートソース)」など、さまざまな学びの場を生み出し、子どもたち一人ひとりが「自分に合った選択肢」を見つけられる手助けをしています。
= お母さんの「キャリアと安心」も支える =
スマイルバトンさんが聴くのは、子どもの声だけではありません。
不登校の子どもに付き添う保護者さんのキャリアサポートにも取り組んでいます。
例えば、地域企業と連携し、スクールに隣接した場所に「付き添いながら働ける」拠点をつくりました。保護者さんは、ここで業務委託という形で広報や事務などの仕事を行います。子どものそばで安心して働きながら、収入も得られる ―このような選択肢も用意しています。
③ 笑顔のバトンを「全国へ」
スマイルバトンさんは、この新しい教育のカタチを全国に広げるために、これまでに積み重ねた運営ノウハウをすべて無償公開(オープンソース化)しています。同じ志を持つ人たちと共に、どの地域にいても子どもたちが自分に合った学びの場を見つけられる社会を目指しています。


ボランティアとして子どもたちと一緒に過ごしてくれる「CoEサポーターズ」も募集中です。
4. 結び
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
「不登校」は今や、どの家庭にも、どのクラスにも起こりうること。
「行きたくない」は、弱さではなく、SOSのサインです。子どもたちは、助けを求める言葉をまだ十分に持てないだけで、心の中では懸命に声を上げています。その声に耳を傾けられる大人がいて、その声に応えられる場所がある―そんな社会が、これからますます必要になっていくのではないでしょうか。
岐阜市で始まったスマイルバトンさんの取り組みは、小さな一歩かもしれません。でも、その新しい教育のカタチは、不登校の子どもたちが「自分に合った学びの場」を見つける選択肢を増やしてくれました。そして、その笑顔のバトンは、全国へと広がろうとしています。
この記事が、その活動を知るきっかけとなり、未来の子どもたちの笑顔のために「今できること」を考える機会につながれば幸いです。それが、皆様自身にとっての「いい転機」にもなるかもしれません。
自分に優しく、人に優しく。
自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。
それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

