人と社会

“何もかも”はできなくとも、”何か”はきっとできる。「ワールド・ビジョン」と共に、子どもたちの未来を取り戻す活動をしてみませんか?

otobokezizou

 皆様、こんにちは。

 パレスチナやウクライナなどの戦争や紛争が続く現在、増え続ける「難民」を巡って、世界で様々な議論が交わされています。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告によれば、難民の数は12年連続で過去最多を更新し続けており、2024年5月時点には1億2,000万人に達しました。これは、日本の人口に相当する人々が、「世界で漂流している」ことを意味しています。そして、難民の約4割を占める推定4,700万人の子どもたちは、長引く難民生活の中、希望の見えない日々を過ごしています。

難民問題は、様々な要因が複雑に絡みあって起こるため、一国では解決できません。国という枠組みを越え、私たち1人ひとりが向き合い、解決のために行動を起こさねばなりません。今回は、キリスト教精神に基づき、総合的かつ継続的な全人的援助を行う国際NGO「ワールド・ビジョン」さんについてお話ししたいと思います。この記事を読んでくださった皆様が、難民問題や国際協力の在り方、世界の子どもたちの未来について、少しでも関心を深めて頂ければ幸いです。

注)ここでの「難民」は、もともと住んでいた家や土地を離れ、国内にとどまって避難生活を送っている「国内避難民」も含みます。

参考:UNHCR「数字で見る難民情勢(2023年)」

 国連経済社会理事会に公認・登録された世界最大級の「子ども支援専門の国際NGO」です。その活動は、キリスト教精神に基づいており、飢餓や疫病、極貧、災害、戦禍などに苦しんでいる人々(特に、開発途上国の人々)に対して、開発援助、緊急人道支援、そして、アドボカシー活動を行っています。

現在では、約100カ国で、宗教、人種、民族、性別を問わず、全ての子どもたちが健やかに成長し、自立的に生きていける世界を目指して活動しています。

参考: 国際協力NGOワールド・ビジョン「ホームページ」

おとぼけ地蔵
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始まりは、アメリカ生まれの宣教師ボブ・ピアスさんが、第2次世界大戦後の混乱期にあった中国で出会った1人の女の子を支援したことでした。その後、より多くの支援を届けるため、1950年9月に「ワールド・ビジョン」が設立されました。

2. 世界の難民問題

2-1. 難民とは?

 UNHCR事務所規程(1950年)、難民条約(1951年)、難民議定書(1967年)において、難民は次のように定義されています。なお、自国が平時であるか、戦時であるかは関係なく、国際的な戦争や国内的な紛争から他国に逃れてきている人々も「難民」としています。

人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々。

参考:UNHCR「難民とは?」

おとぼけ地蔵
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難民キャンプで生まれ、無国籍のまま、何年もずっと難民キャンプにいる子どもたちもいます。

2-2. 難民問題

 難民を巡る問題は、難民が生まれる背景となった政治的、歴史的、民族や宗教の対立、貧困などの様々な要因だけでなく、難民の受け入れ先で起こる様々な社会的トラブルをも含まれます。難民の人々には、国や政府の後ろ盾がありません。そのため、最低限の衣食住や医療もままならず、教育を受ける機会も労働する権利もない長期的なホームレス状態に陥っています。明日の生活も危うい状態にあり、受け入れ先で命を落としてしまうことさえあります。難民の約4割を占める推定4,700万人の子どもたちは、長引く難民生活の中、希望の見えない日々を過ごしています。

基本的人権の観点からも、難民は保護の対象というのが、国際的に一致した見解です。その命を救おうと、これまで先進国を中心に国際社会が人道的な取り組みを積み重ねてきました。しかし、世界で絶え間なく続く戦争や紛争、気候変動による災害や飢餓などによって、難民の数は急速に増え続けています。その8割近くは、近隣の開発途上国に集中しており、受け入れ国の大きな負担となっています。難民キャンプの許容量やその支援にも限界が来ており、差別や暴力によるトラウマなどを負った方々の「心のケア」にまで手が回っていないのも課題になっています。

参考:NHKスペシャル「混迷の世紀 第12回」

現在はパレスチナやウクライナに注目が集まっておりますが、シリアや南スーダンといった長期の避難生活を余儀なくされている人々が今も大勢います。一部ではありますが、いくつか紹介させて頂きます。

= シリア難民 =

 2011年に始まった「アラブの春」で勃発したシリア危機から12年以上が経った現在も、解決の兆しは見えていません。現在、680万人がシリア国内での避難生活を余儀なくされ、536万人が難民としてシリア国外に逃れています。多くの人々が危機的な状況下で大規模な戦闘によって荒廃した環境での生活を余儀なくされています。平和を知らずに育った子どもたちが大勢います。

= ロヒンギャ難民(ミャンマー難民)=

 ロヒンギャとは、主にミャンマー西部に暮らすイスラム系少数民族です。2017年以降、ミャンマーでの激しい武力弾圧や差別を受け、95万人以上が隣国バングラデシュへの避難を余儀なくされました。受け入れ先であるバングラデシュの世界最大の避難キャンプは、既に許容量の限界を超えており、支援も間に合っていない状態です。そして、バングラディッシュ自体も、未だ人口の約24%にも上る貧困層を抱える「後発開発途上国」です。経済インフラの未発達に加え、サイクロンや洪水といった自然災害や気候変動に脆弱な国でもあるため、難民保護が経済的な負担となっています。

= 南スーダン難民 =

 南スーダンは、2011年にスーダン共和国から独立してできた世界で一番新しい国です。しかし、独立後も、南スーダン内部での武力衝突が度々勃発しています。2020年に暫定政府が設立し、平和に向けて少しずつ進展しているものの、未だ各地で地域紛争が繰り返されています。そのため、国内に帰ることは可能ではあるものの、帰国できず難民キャンプでの生活を余儀なくされている人々が232万人もいます。また、国内避難民も223万人に上っており、「アフリカ最大の難民危機」と言われています。生活が困窮する中、子どもに対する搾取や虐待を行うケースが発生し、問題となっています。教育を受ける機会が奪われるどころか、安全に過ごせる環境さえ危うい状態にあります。

参考:国際協力NGOワールド・ビジョン「世界の難民危機と子どもたち」

2-3. 日本の難民受け入れについて

 日本で難民に認定されると、永住許可を受けることができたり、海外へ自由に渡航ができたり、国民年金、健康保険、児童扶養手当、福祉手当の受給資格が得られるなど、日本で生活する私たちと同じような生活と権利が認められます。しかし、その反面、日本での難民認定は、 他の先進国と比べても圧倒的に少ないのが現状です。その認定率は、わずか4%程度… また、認定まで3年以上かかる場合も珍しくなく、難民受け入れに対して、全体的に消極的な姿勢があります。

 出典:認定NPO法人 難民支援協会「難民認定数の各国比較(2023年)」

難民認定を難しくしている要因の1つは、日本政府が「客観的証拠」を非常に重視していることです。難民申請の際、管理当局は、「母国に帰れない理由を、客観的証拠に基づいて証明すること」を要求します。しかし、これは現実的ではありません。そもそも迫害から逃れてくる難民が、その証拠を持って逃げること自体、稀だからです。そんな証拠出国する前に当局に見つかってしませば、命の危険に晒されることは想像に難くありません。中には、母国に残る家族に危害が及ぶことを心配し、証拠書類を全て焼却してから逃げる人もいます。

3. ワールド・ビジョンの活動3本柱

 子どもたちが、心身ともに健やかに成長し、良好な社会・人間関係を築き、尊重・保護され、社会に参加する機会を持ち、そして、社会的公正を実感できる。ワールド・ビジョンさんは、そんな「子どもたちの健やかな成長(Child Well-being)」のため様々な援助活動を行っています。

➀ 開発援助活動

 チャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラムを軸に、水・衛生、教育、保健、栄養、生計向上の分野で開発援助事業を実施しています。その際、以下の6つのポイントを心掛けています。

  • 物を与えるだけではなく、成果の持続性を考えた支援を行うこと。
  • 支援を届ける地域に特有の事情を理解し、貧困の原因を理解すること。
  • コミュニティの人々の理解、協力、参加を得て活動を行うこと。
  • 地域で活動する組織をパートナーとして協力しながら活動すること。
  • 最も弱い立場にある子どもの存在を、コミュニティの人と共に確認し、支援活動の恩恵を受けるように特に配慮すること。
  • 男の子と女の子、男性と女性では、異なる支援ニーズがあることを認識すること。

② 緊急援助活動

 自然災害でも、紛争でも、被災者の半数以上は子どもたちです。ワールド・ビジョンさんは、危機において、最も弱い立場に置かれる子どもたちを守るため、「緊急援助」「復興支援」「防災・減災」の活動を行っています。

緊急援助」

 ワールド・ビジョンさんには、緊急支援専門のスタッフから成るグローバル緊急支援チームがあります。世界各地の災害/紛争地域に身を置き、新たな大規模災害等が発生した際には、発生から数時間で派遣され、緊急支援を行う国の現地スタッフをサポートしています。また、支援の重複や無駄を防ぎ、限られたリソースを効率的に活用するために、国連機関や他の援助組織とも連携して活用しています。

おとぼけ地蔵
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戦略的に選ばれた世界に4カ所ある備蓄倉庫から必要な支援物資を運搬できる体制も整えています。

「復興支援」

 人命最優先で支援する緊急期を乗り越えた次は、復興支援へと移行します。被災した子どもたちが健やかに成長できる生活を取り戻すために、住居や安全な水、食糧供給、教育へのアクセスなど、コミュニティが将来に備えていける力を蓄えられるよう、地域の人々と共に活動しながら、中長期的な支援を行っています。

また、被災により精神的に不安定になる子どもたちのために、子どもたちが自由に過ごせる「チャイルド・フレンドリー・スペース」を運営しています。子どもたちに安全な遊びと学びの場を提供することで、精神的なショックを和らげ、平常心を回復し、復興への希望や期待が持てるよう支援しています。

「防災・減災

 干ばつ、地震、台風、洪水などの様々な災害を前もって想定し、そのリスクに備えて子どもたちを守れる「防災・減災」の活動にも力を入れています。特に、地域コミュニティが自然災害への対応力を身に付け、 危機を察知する早期警戒(Early warning)や被災してもその後に回復できる力(Resilience)を育むことに力を入れています。

③ アドボカシー活動(政府や市民社会への働きかけ)

 貧困や紛争をなくし、子どもたちが健やかに成長できる世界を実現するためには、多くの人による合意が必要です。全ての子どもたちにとって、世界が安全で平和な場所になることを目指し、政府・国際機関や市民社会への働きかけを行っています。中でも、ワールド・ビジョンさんは、「持続可能な開発目標(SDGs)」「子どもの権利」「子どもに対する暴力」「教育」「紛争・難民」「保健・栄養」「人身取引」の分野に力を入れて、アドボカシー活動を行っています。

また、支援先の地域でも、子どもを含めた地域住民自らが自分たちの問題について声をあげ、影響のある政策などについて意見を表明できる支援をも行っています。

おとぼけ地蔵
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難民問題にとどまらず、世界の子どもたちを取り巻く様々な国際問題を改善するために取り組んでいます。

4. 結び

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 難民の人々が故郷を追われる原因は様々ですが、その責任の多くは先進諸国にあるように感じます。しかし、人道主義に理解を示しながらも、「そんな余裕はない」と自国を優先して閉じこもる国が増えているのが現状です。それは「困っている人がいても助けない」と言っているようなもの。難民の受け入れに消極的な日本も例外ではありません。国際問題の解決のために、国が動かないのでれば、民間の力で状況を改善していくほか方法はありませんワールド・ビジョンさんは、国連や国家の支援だけでは解決しにくい「困難な状況下で生きている子どもたちの問題」に取り組んでいます物を与えるだけではなく、子どもたちが自らの力で成長できる支援を行っています。子ども支援専門の国際NGOとして、十分に信頼できる団体だと私は思っています。難民問題を始めとする社会課題のために、“なにか”したいと皆様の心が動いたのなら、まずは小さな寄付から検討して頂けたら嬉しいです。

自分に優しく、人に優しく。自分貢献から他者貢献、そして、社会貢献へ。それが回りまわって、皆様自身や家族にとって優しい社会になるのだと、私は信じています。

ABOUT ME
おとぼけ地蔵
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エンジニア / 副業ブロガー
ご覧くださり、ありがとうございます。 1988年九州生まれのエンジニアです。 現在は大阪在住。半導体業界で働かせて頂いております。バリバリの理系ではありますが、少しだけ経営学も嗜んでおります。 和のテイストが大好きです。また、健康や心の平穏に重きを置いており、身の丈に合った慎ましい生活を心掛けております。
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